妹に会った俺は

 「なんで彩菜がここにいるんだよ」


 「なんでって、お兄ちゃんに会いたかったからだよ。お兄ちゃん、休日になっても帰ってこなかったからさ」


 そういえばそんな事言ってた気がする。確か、休日になったら家に帰るわ、的なこと言ってた気がするな。忙しすぎて忘れてたわ。これは俺が悪いな。


 「悪い悪い、ちょっと忙しくてな」


 「今度からはきちんと帰ってくるように。帰ってこないと、私が甘えれないじゃん!」


 妹よ。その年になってお兄ちゃんに甘えたいとは、どうかと思うよ? そりゃあまあ、俺は嬉しいけどさ。お兄ちゃん、妹の将来が心配。


 「欲望が駄々漏れだぞ、少しは隠せ」


 「嫌だよ。家の中、お兄ちゃんがいないといつも一人なんだよ?話す相手もいないし、遊んでくれる人もいない。お兄ちゃんとメールしたいけど、忙しいと思って毎回メールできなかったんだよ?」


 彩菜は目をうるうるさせて、今にも泣きそうだったが、


 「お兄ちゃん、基本暇だから何時にメールきても大丈夫だぞ?ていうか、むしろ毎日メールしてくれても構わないからな?」


 俺がそういうと、彩菜は喜んでうなずいた。


 「うん、わかった!毎日メールするね!」


 「おう、楽しみにしてる」


 俺たちは、はたから見たら恋人みたいなやり取りをしていた。


 「それはそうと、お兄ちゃん、友達できたの?またなにかやらかしてないよね?」


 痛いところをついてくる妹だ。俺は、少し動揺して、


 「な、なにゅもなかゃったよ?」


 「はぁ、まぁーたなにかやらかしたんだね。まあいいや、その事はまた帰ってきた時に聞くとしようかな。ところで、友達はいないの?」


 「俺に友達が出来た事あったか?今まで通り、ぼっちだよ。でも、俺はその事はだめなことじゃないと思ってるから、変えるつもりはない」


 俺は、どや顔をして言った。

 「まぁーた、変なこと言い出すね。しかも胸を張って言うことじゃないよ?」


 彩菜はやれやれみたいな感じで俺を見てきた。

 そんなあわれむような目で見ないでほしい。お兄ちゃん、ちょっと泣きそう。

 そういえば、玄関に居たってことは誰か寮にいたはずだよな?そう思い俺は、


 「なぁ、ここに来たとき、誰か出なかったか?」


 「確か、綺羅星っていう人が開けてくれたよ?なんか不味かった?」


  まずったな。あの人が開けたとは。何を言われるかわかったもんじゃないしな。頼むから、出てこないでくれよ。そんな願いも虚しく、綺羅星先輩が出てきてしまった。


 「野雫目くん!これから昨日の続きやろうよ!」


 「お兄ちゃん?!これから何をやろうとしてるの?もしかして、エロいこと?」


 妹が頬を赤らめながらそう言ってきたため、


 「なわけあるか、多分昨日やってたゲームの続きだと思う」


 「なぁんだ、そういうことか。てっきり、大人の階段上っちゃったのかと思ったよ」


 「なわけないだろ。ていうか、いつ大人の階段上るとかって習ったんだ?」


 「うんとねー、保険の授業で習ったよ」


 まじかよ。もうそういうこと習うんだな。驚きだよ。


 「おーい、野雫目くーん?返事してくれないかな。早く、世紀の門を開こうじゃないか!」


 なんて意味不明な事をいっているんだ、この先輩は。なにが世紀の門を開こうだ。そんなゲームやった記憶がない。ていうか、そもそもそんなゲームは俺は持っていない。


 「ちょっと待っててくださいよ、綺羅星先輩。今、妹と話してるんで終わったら行きますから」


 「わかったよー。なら、ゲームしてて待ってるね」


 そう言って綺羅星先輩は窓を閉めて、ゲームする準備をしていた。


 「お兄ちゃん、私そろそろ帰らないといけないからさ、最後に抱き締めて?」


 いきなり塩らしくなった妹に俺は違和感を覚えた。でも、一週間も会ってないしな。これくらいいいよな。と思った俺は、


 「なら、少しこっちにきてくれ。俺からだと、恥ずかしいからな」


 「なに、実の妹に欲情してるの」


 彩菜は笑っていたが、


 「なら、抱き締めてやらん」


 そう俺が言った途端、みるみるうちに彩菜の顔が青ざめていく。


 「えっ......嘘だったの?」


 「嘘じゃないから。ほら、早くこいよ」


 「うん!」


 彩菜は俺の体温に安心したのか、すぐに離れた。


 「お兄ちゃんエネルギーを充電出来たから、もう帰るね。あ、そうそう、体育祭観に行くからね。頑張ってね」


 「お、おう」


 といったものの、俺が出る種目なんて一個しかないんですけど。


 「じゃあね、お兄ちゃん!」


 「おう、またな」


 彩菜はそう言って帰っていく。まぁ、家は東京だから、来ようと思えばいつでもこれるからな。次来るのを楽しみにしてる。そんなことを思っていた俺だった。


 彩菜が帰ったのを見送ったあと、俺は綺羅星先輩とゲームをしに、部屋に戻る。


 「綺羅星先輩、早速ゲームしますか」


 「待ってました」


 俺たちは、楽しくゲームをして過ごした。久しぶりに妹に会った俺の顔は、少しだけにやけていた。 明後日の体育祭を観に来てくれると考えるとにやにやが止まらない。いかんいかん、今は綺羅星先輩とゲームしているんだった。こんな顔、見られたら恥ずかしくて死ねる。


 「野雫目くん。何をにやにやしているんだい?」


 「なんでもないですよ」


 「嘘だー。なんかあったんでしょ。話してみなさい」


 「嫌です、綺羅星先輩に話して、通じるとは思えませんから」


 なんたってこの人は宇宙人だからな。人の話をろくに聞いてくれないからな。


 「ええー、話してくれてもいいじゃん。それより夕陽が綺麗だよ!!」


 確かに、夕陽は綺麗だったが、毎日見ているから別に今言わなくてもよくね?と思っていたら、


 「うりゃうりゃうりゃ、これで終わりだ!」


 などという声が聞こえてきた。今やっていた格闘ゲームでは、俺は夕陽をみていたせいで、倒されてしまっていた。


 「汚いですよ、綺羅星先輩」


 「油断大敵なのだよ、野雫目くん。いつも周囲に警戒しておかないと」


 また訳のわからないことを言っていた。というか周囲を警戒しないといけないことがあるんだろうか? まぁそれでも案外楽しくゲームをすることができていることが不思議でならない。まぁこんな日も悪くないかな、なんて思っている俺がいた。

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