咲久野とのお出掛け

 俺たちは買い物も一段落つき、お腹もすいてきたため、ファミレスに入った。店員の人に席を案内され俺たちは席につき、一息つく。

 メニュー表をみて、なにを頼もうか悩んでいた俺は、咲久野が頼むものでいいやと思った。


 「なあ、咲久野。なに頼む?」


 「私?うーん、二つで迷ってるんだよね」


 「なにと何で迷ってるんだ?」


 「このカニクリームパスタか、えびのトマトクリームソースパスタのどっちにするか、悩んでるんだよね」


 咲久野は、どちらにしようか決めれないようだった。あれもすてがたい、いや、こっちも美味しそうだよ。などど一人でぶつぶつ言っていた。


 「なら、俺がカニクリームパスタを頼むから、えびのトマトクリームパスタを頼め。そしたら、後で分けるからさ」


 「なるほど、そういうてがあったね」


 思いつかなかったのかよ。どっちも頼めば半分づつ食べれるのにな。ほんと、もう少し頭をはたらかせてくれよ、まったく。


 「んじゃ、早速頼みますか」


 俺は店員を呼ぶために呼び鈴を押した。少しして店員がきたため、俺は注文を言う。


 「カニクリームパスタと、えびのトマトクリームソースパスタをお願いします」


 「かしこまりました。カニクリームパスタお一つと、えびのトマトクリームソースパスタお一つでよろしいでしょうか」


 「はい、それでいいです」


 注文を聞いた店員は、早速厨房の方へ戻っていった。俺たちは料理がくる間、たわいない話をしていた。最近の学校はどうなのか、などを話した。咲久野は楽しそうに話していたが、俺はそうでもない。そもそも、ぼっちだった俺は誰とも話していないのに、この前の事件のせいでよりいっそうクラスの奴等に嫌われている。咲久野も、その事を察したのかそれ以上、学校での話は言わなかった。


 「そうそう、この前友達になった人を、今度紹介するね!」


 いきなりそう言われたため、俺は少し驚いた。


 「お、おい。いきなり言うなよな、ビックリしたじゃないか」


 「なんとなく、今言いたかったんだよ」


 「まぁいい。でもな、咲久野の友達なら俺と会わせちゃダメだろ。ただでさえ、こんな噂が流れてるんだからな」


 「そんなの関係ないよ。多分分かってくれるからさ」


 お願い!と頭を下げられては断ることもできないよな。俺は覚悟を決めた。


 「ーーわかったよ」


 「うん!」


 咲久野はとびきりの笑顔で答えた。

 そうこうしてるうちに、注文していた料理がきた。


 「すみません、取り皿も二枚ください」


 店員さんには申し訳いことをしたな。と心のなかで謝ったいると、咲久野は待ちきれなかったのか、もう食べ始めていた。


 「ちょっ、なにもう食ってんだよ!まだ取り皿に分けてないだろーが」


 「別に半分食べたら、交換すればいいだけじゃないか」


 なに言ってんの、こいつ。みたいな目で俺を見てくる。俺、なんか間違ったこと言ったっけ?そんなことを思っていると、先程の店員さんが取り皿を持ってきてくれた。


 「ありがとうございます!」


 お礼を言って取り皿を受けとる。それに俺が頼んだパスタを半分いれ、咲久野の前に置く。


 「この、えびのトマトクリームソースパスタ、とても美味しい!特にこのえびが最高!」


 などと言っていた。俺はまだ自分の分でさえ食べていないため、感想を言えないでいた。


 「そうか、それならよかったな」


 咲久野は俺の話を無視して、黙々とパスタを食べている。

 ていうか、そこ無視するところじゃないでしょ。ちょっと悲しくなってきた。


 「そっちのパスタも頂戴!」


 「すぐ目の前に置いてあるだろ。それ食べろ」


 「ありがとう」


 お礼を言われ、少し嬉しかった。

 俺も早く食べないとなと思い、まずは咲久野からもらったえびのトマトクリームソースパスタを食べる。ーーこれはほんとーに美味しいな。このえびがたまらない。箸が進むなこれは。


 「なぁ、このえびトマトクリームパスタ、めっちゃ美味しいな!」


 「だよね!この、カニクリームパスタもめっちゃ美味しいよ!」


 「まじで?!」 


 「うん!」


 俺は咲久野が美味しいと言った、カニクリームパスタも食べた。こっちはこっちでカニがいい味をだしている。とても美味しい。今度また一人で来ようかなと思うくらいにはおいしかった。


 俺たちは食べ終わり、少し落ち着いてから会計をしてファミレスをあとにする。


 「これからどうしよっか?」


 「なら、本屋に行きたいから、少し付き合ってくれ」


 「わかった」


 この前は痴漢から助けたため、本屋によれなかったんだよな。新しい小説ないか探そうとしてたから、丁度いいか。本屋についた俺は、早速ラノベコーナーに向かった。


 「これだよこれ、恋愛に奥手だった俺がハーレムを築いたら。がめっちゃ面白いんだよね。何だろう、男の夢がつまってる作品だよな」


 俺はぶつぶつと独り言を言っていた。俺はその本を手に、他の本も探した。探しても、面白そうな本が見つからなかったため、今日はこの本だけ買うことにした。早速、帰ったら読むぞ!と意気込んでいた俺は、本屋をあとにしようとした。嬉しすぎて、咲久野がいるのを忘れていた俺は、突然目の前に咲久野がいたため、ビックリする。


 「咲久野!早く寮に戻るぞ。用事が出来た」


 まあ、用事といってもさっき買った本を読むだけなんだがな。


 「用事があるなら、急いで帰ろうよ!」


 俺たちは急いで寮に帰る。電車やバスを使い、帰る。電車やバスでは疲れていたのか、咲久野は眠ってしまった。俺は咲久野の寝顔をみて、思わず頭を撫でてしまった。


 「今日は俺と出掛けてくれてありがとな」


 小さい声で声で言ったそれは、当然咲久野には聞こえていなかった。

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