少女に出会った日
寮に行くことを親に何て言おうか考えていると、家についてしまった。俺は考えることをやめ、家に入った。
「たでーま」
「お帰りー。いつも直帰していたお兄ちゃんが、珍しく遅かったね」
含みのあるような言い方だったが、気にしない。
「今日はちょっと職員室に呼ばれてな。話を聞いてるうちに長引いたんだよ」
「ふーん、そうなんだ。まーたなにかやらかしたんだねお兄ちゃん」
我が妹ながら、実に腹が立つ。いつも俺の事をどういう風に思ってるんでしょうかね、この妹は。
「そういえば、明日から寮生活になるんで、そこんとこよろしく」
さらっと言ってやった。どう反応するか楽しみだ。妹を見ていると、目がうるうるしてきて、今にも泣き出しそうだった。俺は慌てて妹のもとにいった。
「ごめんな。今日急に決まって、明日から寮にいかなくちゃダメなんだよ。正月とか、帰ってくるからさ」
「お兄ちゃんと一緒がいいの」
駄々をこねる彩菜は可愛かったため心が揺らいだが、それでも無理なものは無理なんだ。
「悪い」
それだけを言い残し、俺は部屋に戻った。俺も彩菜と離れるのは嫌だったがこれだけは仕方のないことだ。考えていると、いつのまにか眠ってしまっていた。親父ももう帰ってきていたため、俺は親父に話をしに行った。
ーー親父に俺は訳を話した。なぜ寮生活をしないといけなくなったのか。また、仕送りをお願い出来るかなどを聞いた。親父は俺が寮に行くと言うことを聞いて、ひどく喜んでいた。俺がいなくなることが嬉しいらしい。どんだけ彩菜のことが好きなんだよこの親父は。俺は腹が立ったが、今怒ったら仕送りがなくなると思い、こらえた。
「仕送りはしてやるが、最低限のお金しか送らん。だから、欲しいものがあったりしたら、バイトでもなんでもしてお金を貯めるんだな」
笑いながら言ってきたため、手が出そうになったがこれでも一応俺の親だし、それに今まできちんと育ててくれたしな。
「ありがとな、親父」
改まって感謝を言うのはなんかこう、恥ずかしいな。そういい、俺はリビングを後にした。部屋に戻った俺は、明日の準備をしていた。明日は幸いにも土曜日だったため、ゆっくり準備しても間に合うな。準備も一通り終わり、俺は寝ることにした。
ーー朝起きた俺は今日から寮生活になることを思いだし、憂鬱になっていた。忘れてたってことにして行かなくていいかなと思ったが、忘れていましたなんて言ったら、間違いなく佐倉先生に殴られるよなぁ。めんどいが重い腰をあげ土曜日にも関わらず、寮でもなく学校に来ていた。佐倉先生に呼ばれていたからだ。
「失礼します」
「おや、よく来てくれたな。てっきり来ないと思ってたよ」
「来なかったら、先生俺の事殴りますよね?」
なんなら、直接家にきそうまである。そうなったら困るから、こうして来ているのだ。
「よくわかっているな。それで、話と言うのはこの娘を寮までつれていってほしいんだ」
と言いながら、写真を渡された。
めんどくさいんですけど。先生がいけばいいじゃんと心のなかで思っていた俺だが、言わないでおいた。
「なんで俺なんですか? ていうか、その娘一人でもこれるんじゃないんですか? 」
「それが、いかんせんこの土地にまだ慣れてないみたいでな。案内してほしいと昨日言われてたんだよ。そこで、丁度寮に入る君にお願いしたわけだよ」
「わかりましたよ。それで、どこにその娘はいるんですか? 」
「ああ、それなら、駅の方に行ってくれ。時間は午後一時だから、忘れないようにお願いするよ」
「はぁ、わかりました」
ていうかまだ十時なんだけど。どうすればいいんですかね。そういうことなら、こんな早くに来なければよかったなと思い、悲しくなってきた。
「そうそう、一度寮に行ってもいいからな。時間になったらこの娘を迎えにいけばいいから」
「今から行っていいんですか?なら早く言ってくださいよ。今からなにすればいいのか悩んでたところなんですからね」
「悪かったよ。言い忘れてたんだ、許してくれ」
佐倉先生は笑っていた。俺からしたら笑い事じゃないんだけどな。まぁいい、そうと決まれば早速寮に行くぞ!と気合いをいれた。まぁ、気合いを入れる必要はないんだけどな。
ーーひまわり荘。そう書かれてあった表札があった。その表札は曲がっていた。建物の外見はお世辞にも綺麗とは言えない。ほんとーに大丈夫なのかと思い、恐る恐る入った。開けても誰もいなかったため、俺は先生から聞いた番号の部屋に入る。部屋は普通だった。入った後、荷物の整理をした。意外と時間がかからずに出来たため、少し横になる。持ってきたもの、少なかったんだな、などと思っていたら、迎えに行く時間になったため、部屋を後にした。
いつも通学以外で町に行くことがなかった俺は、迷わないか心配だった。帰りも歩くことになるので、道を覚えておくことにした。幸いにも駅は、いつも使っていたところだったので、迷わず行くことができた。
俺は先程買った、肉まんを食べながら写真の娘を待っていた。写真の娘が駅から来たとき、持っていた肉まんを慌てて食べきった。俺はただただ見ていることしかできなかった。それほどまでに美しかった。いじめられてから今まで人に興味がなかった俺だが、この娘には興味がわいた。これじゃぼっち失格だなと思ったが、しょうがないことだ。
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