ぼっちな俺だがラブコメな日常

こめっこぱん

1章:どたばたな1週間

ぼっちな俺は寮生活を強いられる

中学時代を振り返ってみても、いい思い出がない。そもそも振り返る必要があるのだろうか。思い出と言っても、いじめられていた事しか思い出せないんだが。


例えば、グループで話しているのを聞いてあいづちをうっているとしよう。いきなり、「えっ、こんな人いたっけ?」などと言われ、クラスの雰囲気が悪くなっていくんだよ。しかも悪くしているのはお前だ、みたいなことを言われ俺のせいにされる。

 そんな俺でも仲が良かったやつもいた。俺はそいつの事を友達と思っていた。だか、友達と思っていた奴も俺を裏切り、皆と同じいじめる側になっていた。修学旅行のグループ決めでもそうだ。俺だけどこの班にもはいれず、一人で行動していた。唯一、自主研も一人だったため、好きなところに行けたことは良かったと思っている。他にもまだまだある。席替えの時なんて、俺の隣になった女子に「マジ最悪、この席、どうにかならないかな」などと言われた。席替えだと他の人にも言われたっけな。「野雫目君のだめくんは一番後ろでいいんじゃない?」などと言われ、後ろの方にぽつんと俺の席がおかれた。そのあとの席替えでは、俺だけ席を変えることがなかった。まぁ、今となってはいい思い出なんだがな。


 他の奴等を観察していて、ふと思ったことがある。あいつらは上部だけの関係で繋がっているということだ。人は、一人で生きていけないということだ。何をするにも集団で行動する。その点、一人で何でもできる奴は凄いと思う。


 ーー結論、ぼっちは素晴らしいということになる。


 「なんだ、このふざけた作文は。しかも最後の方は自分の傷ついた時の話しかしてないし、最後にいたっては意味不明だしな」


 怒っているように、また呆れているような顔をして、持っていた煙草に火をつけていた。

 ここ、職員室なんだけど大丈夫なのかこの先生は。場をわきまえないで行動してるから、結婚できないんだよ。


 そういえば、なんで俺はいじめられていたのだろうか。顔は普通だし、頭だって普通だった。やっぱこの鋭い目が原因だったのかな。それとも人見知りだから、人とちゃんと話すことができないからなのか?と思った。


 「誰が結婚できないって、野雫目。ちょっと先生傷ついちゃったなー」


 めちゃくちゃ睨んでらっしゃる。ふぇぇー、怖いよー。てゆうか、なんでこの先生は俺が思っていることがわかったんだ?まさかエスパーかなんかなのか?てゆうか、ナチュラルに心読むなよ。考え事できなくなるじゃないか。


 「おーい。先生の話は無視しちゃいけないよ」


 「いやだなぁー、先生の話を無視するわけないじゃないですか」


 てゆうかさっきの言葉、可愛いように言ったつもりなのかわからんが痛々しいよな。なんか最後の文字の後に☆みたいなのがでていたかもしれん。ちょっとないわー。


 「また失礼なことを考えなかったか、野雫目」


 「いえ、なにも思ってないですよ」


 図星だったため少しドキッとしたが、いつも通り話すことができた。


 「まあいい、野雫目。君にはこの学校が造った寮に入ってもらう。そこで友達を作るんだな」


 「ちょっと待ってくださいよ佐倉先生さくらせんせい。あまりにも急すぎるし、そもそも俺は寮生活なんて絶対にしたくありませんからね」


 「なにか言ったか。私は反論していいとはいってないんだがな」


 めちゃくちゃ怒ってらっしゃる。もう少し怒らせたら完璧に殴られるな。ここは素直に従っておこうかな。


 「わかりましたよ。寮に入りますよ」


 「よろしい」


 ここ、市立東山芸術高校しりつとおやまげいじゅつこうこうは神奈川県にある。普通科と芸術科の二つに別れており、そのなかでも俺は普通科の理系の方だ。この学校には寮があり、そこに住んでいる人もいるらしい。俺は、家が東京だったため、家から通っていた。それよりも、今はそれどころじゃない。

 嫌だなー。寮に入りたくないなー。はぁ、家に帰りたい。早く話終わらないかなぁ。


 「あ、そうそう。明日から寮に入ってもらうから、今日中に荷物まとめといてね。それと、明日寮行く前に、私のところに寄っていってね」


 「マジっすか。ちょっと急すぎませんかね」


 「しょうがないだろう。ここの学校はそういう決まりなんだからな」


 「変な決まりですね。もう少し考えてほしいっすね」


 「私に言われてもどうしようもないけどな。とにかく今日中に荷物準備しといてね」


 佐倉先生も呆れたように言っていた。それは俺のことで呆れているのか、学校の方針に呆れているのかはわからなかった。


 「はぁ、わかりましたよ。話はこれで終わりですよね?」


 まだ話があれば俺は死んでしまう。頼む先生、ないと言ってくれ。俺のライフはもうゼロよ、と心のなかで思っていた。ていうか、俺が女の人みたいに言っても、キモいだけでしたね。


「ちゃんと寮に行く前に私のところに来てくれよ」


 「わかってますよ」


 失礼します、と言って職員室を後にする。ふう、やっと話が終わったか。一時間くらい話しただろうか。かなり疲れた。どんだけ話せば気がすむんだよあの先生は。


 ふと、佐倉先生って可愛いのになんでもてないのだろうかと思った。見た目だってあんなに可愛いのに、やっぱあの性格が問題なのか。普通に生徒のこと殴ってくるしな。

 そんなことより、明日から寮生活なのか。最悪だ。せっかく三年間はボッチ生活をおくれると思っていたのに、自分の時間がなくなるじゃないか。


 俺こと野雫目光太のだめこうた、明日から寮生活が始まる。

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