第5話

 今日は受け持ちの講座は無い。原稿の締め切りはまだ遠い。

 空は晴れ、穏やかな風が吹いていて、気温も丁度良い。実に良い日だ。

 自宅からてくてくと歩き、15分遅れのバスに文句も言わずに乗る。座席から外をじっと見ていると、駅に着く。ちょっと裏道に入ると、行き慣れた教会があった。


「こんにちはっと……」


 お気軽にお入りくださいと書かれた扉を開けて中に入る。ほどほどの広さの礼拝堂。真ん中の通路を通り、中程で正面の十字架を見つめる。

 あまり信じてもらえないが、魔術師は神を嫌っていない。悪魔を使役していても。なんせ魔術師は天使にも力を借りる。最終的な目標は、魂の階梯を上がり、神と合一すること。だから神を嫌うこと無いし、教会も嫌いじゃ無い。あっちがどう思うかは別として。


「おぅ、兄ちゃんよーきたな」

「あぁどうも前田神父」


 後ろからヒドいダミ声と肉の圧力が掛かったので、振り返って挨拶する。

 マッチョがパツンパツンのカソックを着ている。どう見てもプロレスラーがやってるコスプレなんだが、本物の神父だ。最初は色々有ったが、今では信頼している。


「なんぞあったんかい?」

「えぇ。お祈りをさせていただきたいのと、お話を聞いていただければ」

「そんなことだと思ったわ。まぁゆっくりしていき」


 しかし、いつも思うんだが。この人の関西弁? なんか偽物っぽいんだよなぁ。


 礼拝を終えた後、神父に話しを聞いてもらう。雑談という形で。神父さん、押しが強いように見えて、案外聞き上手。話してると何か気が休まる。


「よっしゃ、ほんなら今日の食事会にでも顔を出すとええ」

「え、でも、急に部外者が入るのも……」

「ええからええから」


 前言撤回、押し強すぎ。結局、食事会の準備から何から手伝わされた。

 予定は狂ったけど、楽しい一時だった、かな?

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