最終話「『ド・リ・カ・ム』だけど小説家だけは保険無理だよね!みんな!頑張ろうぜ!!だぜ!!」
『ファイナンシャル・ドリーム』。
実に夢のある素敵な保険屋さんである。
そして一週間後。
「おーい。新人くーん」
「社長!僕の名前は竹下です!」
「ごめんごめん。それにしてもちょうどグッドタイミングで『ドリーマー保険』から我が社に新入社員が入社してくるとは。うーん。これは出木杉君だね」
「それにしても最初に覚える仕事が飲み物の入れ方とは。正社員とはそういうもんなんですかねえ?それと服装や髪形は自由と聞いてましたが眼鏡着用は聞いてませんでしたよ」
「はっはっは、黄色い眼鏡はとても似合っているよ。君は役者希望だったんだろ?それなら保険屋の仕事はすぐに覚えることが出来るから。それよりも我が社のドリンクは一番の売り物だからね。とても大事な仕事なんだよ!ドリンクカムトゥルーだよ!ドリンクカムトゥルー!ド・リ・カ・ムだよ!」
「僕のドリカムは実現しなかったですけどね」
「何を言ってるんだい。君の夢はこれからだよ!僕と一緒に世界一の保険屋を目指すんだ!我が社はアメリカ支店を設立したばかりで君には即戦力として期待してるんだからね!これからやることも山ほどあるんだからね!アメリカに行った大山君のお客さんの引継ぎもあるしね。さあ忙しくなるよー!」
「そうですねえ。大山先輩はとても素晴らしい仕事のできる先輩だったと聞いております。僕は負けないように、そしていつか大山先輩を超えるのが当面の夢ですね」
「はっはっは、これはいきなり大きな夢を公言したねえー。それはかなり大変なことだよ。それが分かってるのかな?」
「もちのろんです!」
「それじゃあ、まだまだ全然足元にも及ばないねえ。竹下君の担当は大山君だったんだよね?」
「はい!」
「じゃあ、大山君がいかにすごい保険屋さんだったか。分かるよね?」
「はい!」
「どうだい?保険屋に夢を持てそうかい?」
「そうですねえ。今はまだ雑用や覚えることがたくさんありますのでそれを一生懸命頑張ります。そして僕は僕のキャラクターを前面に出して、僕にしかなれない保険屋さんを目指しますよ。何より、この『ファイナンシャル・ドリーム』は働いていてとても楽しいでーす!世界一の保険屋さんになるって夢。かけるだけの価値はあると思います!」
「うん!実に頼もしい返事だ!期待しているよ!」
新人さんも入って『ファイナンシャル・ドリーム』はまた新しい商品をどんどん開発していくであろう。この新人の竹下君も「ドリーマー保険」から役者になる夢を必死で追いかけて追いかけて、しかし残念ながら夢が叶わず、本気で涙を流した後に『ファイナンシャル・ドリーム』の扉を叩いた。役者を目指した経験を活かし、普通の人では考えられないアイデアを出してくれるだろうし、役者と言う職業は実に演技力が優れている。また、台本を暗記するだけの記憶力もある。アドリブに対応する高度なテクニックも持っている。近い将来、この竹下君は頭角を現すであろう。そして竹下君は『正義』の心と『人として当たり前の優しさ』、『挫折を味わった強さ』を持っている。今後もこの『ファイナンシャル・ドリーム』から目が離せない。日本一の保険屋さんに、そして世界一の保険屋さんに。世界に一つだけの保険屋さんを目指す保険屋さん。
その名も『ファイナンシャル・ドリーム』。
この保険屋さんには本当に夢がある。
ピンポーン。
「おっとお客さんだ。君ぃ!分かっているね?」
「はい!了解です!」
そして竹下君が『ファイナンシャル・ドリーム』の扉を開けてお客さんを元気な声で出迎える。
「『ファイナンシャル・ドリーム』へようこそ!『ファイナンシャル・ドリーム』へようこそ⤴ここは坂上町だぜ!」
人生は常に選択と後悔と反省の連続である。そして人生には常にリスクがある。そのリスクを請け負ってくれる夢の保険屋『ファイナンシャル・ドリーム』。実に面白い。そして実に夢がある。
そして今日もお客さんが『ファイナンシャル・ドリーム』の扉を開く。
「はいカットォ!オッケーオッケー!NGなしの一発オッケーだよ!」
「あ、プロデューサー。いいでしょ?今度の竹下君は役者志望だっただけありまして。いい演技するでしょー?」
「いいねえー。実にいい!」
「アドリブにも強いですし、これは強力な新戦力であり即戦力ですよ!」
「よし!君にはいつも頑張ってもらっているから特別ボーナスでも出すかな!」
「え!?本当ですか?」
「もちろんだよー。僕が嘘を言ったことがあるかい?」
「ですよねえー。ザギンでしーすーでギロッポンでちゃんねえですもんねえー」
「ほら!この封筒に入ってるからこれで美味いもんでも食ってくれえ!ほらよ!」
「あざまーす!」
封筒を開けると中には割り箸が!!!
「あ、あのお…。プロデューサーさん?これは何の冗談ですか?」
「だーかーらー、それで美味いもんでも食ってくれって言ったじゃない?」
「まあ…、確かに…、嘘はついてないですが…」
「それよりさ!この保険屋さんの物語、数字いいよー!」
「本当ですか!?」
「これは続編をやるか!と言う声も上から出てるんだよねー」
「ほ、ほ、本当ですか!?」
「本当だよー。僕が嘘を言ったことがあるかい(二回目)?」
「な、ないです!」
「タイトルはもう決まってるんだよ」
「え!本当ですか?で、そのタイトル名はなんでしょう?」
「ずばり!『ファイナンシャル・ドリームへようこそ!坂上町!中畑清です!』だよ」
「ええええええええ。そこはせめて『坂上町!まえかわきよしです!』の方がいいんじゃないでしょうか?」
「おい!!お前も我が社の保険に加入したいだろう!?」
ここで筆者本人登場。
「あ、はい。おっしゃるとおりですー。こんな保険に入ってみたいですー」
「我が社はどんな保険も請け負う。だが、お前はダメだ!他の皆さんも時間がない中一生懸命頑張ってるんだぞ!!小説家になりたくて、書籍化を目指して。お前も負けずに頑張れよな!応援だけはしてやるわい(丸めた新聞紙のチラシでメガホン作ってな)」
「んん?最後の方がよく聞こえませんでしたけど…」
「ま、ま、ま、とにかく『みんなで共に頑張りましょう』だよ!」
みんなで共に頑張りましょう!
「『ファイナンシャル・ドリーム』へようこそ!~ここは坂上町だぜ!~」 工藤千尋(一八九三~一九六二 仏) @yatiyo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます