第二十三話「結婚保険編・『わたしがおばさんになっても泳ぎやディスコに連れて行ってくれるのお?』だぜ!」
「わたしがおばさんになっても泳ぎやディスコに連れて行ってくれるのお?さあ行こう!『結婚保険』編の巻ぃ~!」
「毎度毎度分かりやすい独り言をご苦労様でございますでございます」
ピンポーン!
「あのお…、本日二時でお約束していた…」
『ファイナンシャル・ドリーム』の扉を開け、もじもじしながら大山を見つめている若い二人の男女。男の方が何とか聞こえる声で大山に話しかける。
「あ、お電話で本日二時のアポイントをいただきました『結婚保険』ご希望の長江様と沢原様ですね。お待ちしておりました。どうぞお入りになって奥のソファーでお話を伺いますので」
「は、はあ…」
もじもじしながら橋本の待つソファーまで事務所の中をきょろきょろ見ながらゆっくりと歩く若い二人。
「どうもどうも!お待ちしておりました!今回は我が社の『結婚保険』をご検討されているとのことで。君ぃ!この若い素敵なカップル、そしてこれから素敵な家庭を築いていかれる二人にラブラブな飲み物をご用意頼むよ!」
「サーイエッ、…かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
「今、ラブラブな飲み物をご用意いたしますので。それまでおかけになってお待ちください。それにしても、えー、旦那様になられる長江様ですか。実に誠実そうな印象ですね。とても真面目そうだ。うん、『真面目の一歩』ぐらい真面目そうだ!」
「は、はい?」
「え?『真面目の一歩』をご存知ありませんか?あの『デンプシーロール破り破り破り破り…』、あれ?今はあれどれぐらい破りあいを繰り返したんだっけ?」
「お待たせしました。ラブラブなお飲み物をご用意いたしました。どうぞ」
そう言って大山がもじこもじおの目の前にグラスをそれぞれ静かに置く。自分たちの分もテーブルに置き、大山も橋本の隣に座る。
「これは…、レモンジュースですか?」
「長江様、これは『はちみつレモン』と言う飲み物でございます。ハチミツはラブラブなものの代表でありましてね。『ハネムーン』の由来もハチミツから来ているぐらいなんです。ハチミツみたいにとろけそうな恋をして、ご結婚を決められたんですよね?」
「…なんか素敵ですね…」
もじこの沢原が初めて口を開く。
「最初にお二人に言っておきましょう。結婚とは!一言で言うなら『下着をめくる冒険』なのです!!………、ん?なんかざわついた?」
「そうですね。日本を代表する大作家先生のファンの方が…」
「まあそれはさておき、今の若い男女は草食系とかよく言われているみたいですけど。お二人もやります?ポケモ〇」
「え?ポケモ〇ですか?はあ…」
「あ、結構やってます…」
もじこもじおがだんだん会話に慣れてきたようだ。
「僕から言わせてもらうとですね。皆さんにはポケモ〇を捕まえるよりも真の人生のパートナーを捕まえなさいよってことですね。まあ、他にも捕まえるべき大事なものはたくさんありますが。そうですねえ、お二人の馴れ初めや今後の将来、お聞きしたいことはたくさんありますが。ここは簡単な質問形式でお二人にいくつかご質問を致します。君ぃ。比較のために君も一緒に答えてくれたまえ。のぞみ、かなえ、たまえ」
「?」
橋本の最後のフレーズに困惑するもじこもじお。
「分かりました。それではお二人の後に私も答えます。それではご質問どうぞ。お二人もよろしいですか?分からない時や言えないことは正直にそう言っていただいて結構ですので」
「…はい」
「…分かりました」
「では第一問。『自由の女神は実はバツイチである。〇か×か?』…、と言うのは冗談で、お二人のご出身は?」
「石川です」
「大阪です」
「ジャパンです」
大山の答えにもじこもじおがキョトンとする。
「いやあ、素晴らしい!お二人はご存知ですか?石川と大阪は友好条約を結んでいるんですよ。これは素晴らしい!え?石川大阪友好条約をご存知ありませんか?イカしたWAY♪渚WAYあっちもこっちも田んぼだYeah!何しとるん?早おいでや あんころ 魚 うまいげんYeah!さあ次々いきますよ。異性の友達はいますか?」
「…何人かいます」
「…私も何人か」
「いません。あ、〇フレはフレンドで友達ですか。便利な言葉があるものですねえ」
「次、異性で最初にどこを見ますか?」
「うーん、顔ですか。いや、髪型かな」
「挨拶とかそういうことが出来るかです…」
「携帯を見ます。メールとライン、あとはネットの閲覧履歴や使っているアプリ、保存してある画像や動画で大体分かるかと思います」
「次、自分は誰に似ているとよく言われますか?」
「うーん、芸能人の〇〇さんによく似てるって言われます」
「…よく言われるよねー。ねー。私は芸能人の△△さんに似てるってよく言われます…」
「言われるよねー」
お互いにキャッキャしているもじこもじおをしり目に大山が答える。
「私は母親に似ているとよく言われます」
「次、待ち合わせ時間に相手が三十分経っても現れない。あなたならどうします?」
「うーん、心配なので電話するかな」
「私は…、連絡がなければ帰っちゃうかなあ」
「私は『キャンディクラッシュ』をしながら待ちます。しかし条件が一つあります。『〇〇秒以内に〇〇点以上獲得せよ』のステージの最中に到着した場合は終わるまで待ってもらいます」
「次、尊敬している人は?」
「両親です」
「あ、私も同じです…。育ててくれた親です」
「長曾我部元親です。深い意味はないです」
「次、身に覚えのない罪で指名手配されたらどうします?」
「無実を訴えますかね…」
「うーん、弁護士を雇って戦います…」
「今は両手上げてても『この人痴漢です』で終わりますからねえ。この質問はなかなか即答出来ないです」
「次、目の前でビルから飛び降りようとしている人が!あなたならどうする?」
「止めますね。とりあえず落ち着いてと。話を聞くようにします」
「私も…話を聞いてあげるかなあ…」
「その方は死を覚悟されているのですね?そんな覚悟を持った方に私ごときが何を言っても無駄かと思います」
「次、今一番行きたいところは?」
「それは…、あれですか?ハワイかなあ」
「私は…、国内でもいいかなあ…。北海道とか…」
「嫁に行きたいです」
「次、相手に何を求めますか?」
「うーん、家庭を守ってほしい、かな」
「私も…、家族を一番大事にしてほしい…かな」
「相手に何を求めていいのですか?とりあえずお金ですかね。あるだけください。あと、ラーメン屋の屋台。あれが欲しいですね。あれも求めます。あと今すぐパン買ってきてください」
「どうもどうも!ご協力ありがとうございました!え?質問は毎回変えてますので。大山もその場で考えて即答してますよ。ちょっとしたその方の考え方を見るためにご質問をさせていただいてますので。ではお電話でお話しした資料を今日はお持ちいただけましたでしょうか?」
「あ、はい。こちらに」
そう言ってもじおが封筒を取り出しそれを橋本が受け取り、大山に手渡す。
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