第十二話「初恋告白保険編・依頼者は小学生!?『おい!台本にないぞ!聞いてないよー(月がロケットに飛ぶ時代に)』だぜ!」

「依頼者は小学生?初めての告白保険の巻ぃぃぃぃ!」

「社長、独り言もいいですがそれはどういうことでございますか?」

「それが僕にも分からないんだよ。ADさんのカンペに書かれたまま僕は喋っているからね」

 ピンポーン。

「まさかまさかでございます」

「おかしいぞ。今日はこの後『マイホーム保険』のアポしか入ってなかったはずだろう。ちょっとプロデューサーに聞いてみるよ。え?アドリブで何とかしろ?えーい!とにかく君ぃ!扉を開けてみてくれ!」

「サーイエッサーでございます」

 いつもの変身の決めポーズの後に扉を開ける大山。そこにはランドセルを背負ったお子様が。

「ここは保険屋さんだろ?僕はお客さんだぞ」

「大山君。大事なお客様だ。ご案内して。どうも初めまして。我が社へご来店ありがとうございます。私がこの『ファイナンシャル・ドリーム』の代表の橋本と申します。ランドセルを背負っているところを見ると小学校にお勤めされてるかと思われますがあなたのお名前と学年を教えていただいてもよろしいでしょうか?」

「僕の名前は斎藤雄介。四年生だ」

「斎藤様ですね。本日も学校お疲れさまでした。君ぃ!このお客様においしいオレンジジュースをお出しして」

「あ、馬鹿にしてるな!」

「馬鹿にするなんてとんでもない。私たちはお客様を第一に考えております。わざわざ事務所へ足を運んでくださったお客様には必ず素敵なお飲み物をお出しすることをおもてなしの一つとして徹底しております。幸い斎藤様はちょうど他のお客様がご相談に来られていないタイミングで来てくれました。ご予約のないお客様には時間が空くまで待っていただくのが我が社の方針です。しかも私も、もう一人の彼女、大山も空いてます。斎藤様のご相談を二人でお伺いし、それに対して全力でお力になります。どうぞこちらへ」

「う、うん。最初に言っとくけどさあ。小学生だからって馬鹿にしたら帰って悪口言いふらすからね!」

「お約束いたしますよ。世の中には見た目は子供で頭脳は大人の方もいらっしゃいますからね。だからこちらもお願いします。決してお話し中に麻酔針で私を眠らせないでくださいね」

「やっぱり馬鹿にしてるな!」

「社長の非礼を私がお詫びいたします。我が社特製のオレンジジュースをご用意いたしました。どうぞこちらへ」

「この大山さんは信用できる!橋本!お前は僕を馬鹿にしてるから信用できない!」

「そうなんですよ。斎藤様。橋本はいつもお客様に怒られてばかりでして。私がお話を伺いますので。橋本はこのオレンジジュースが大好きでして。どうか一緒にこのオレンジジュースを橋本も飲むことをお許しください」

「しょうがないなあ」

 どうやら今回の依頼者はかなりデリケートな方らしい。海千山千の橋本もいきなり嫌われてしまった。しばらく様子を見てみよう。

「なにこれ?これがオレンジジュースの色なの?」

「これはカルピスオレンジでございます」

「カルピスって私の子供の頃はカウピスと言いまして…」

「橋本は僕の許可なしで喋っちゃダメ!」

「橋本は喋っちゃダメです」

 悲しそうにストローでカルピスオレンジを飲む橋本。

「保険屋さんは結局『大数の法則』でやってるんだろ?」

 この言葉に橋本と大山は顔を見合わせる。この斎藤コナン、恐るべし。

「…あのお、斎藤様。スマホか何かをお持ちでしょうか?もしくは家でネット環境が整ってらっしゃるとか?」

「スマホ?うちの家は禁止されてるから。ネットもゲームも全部禁止されてる。てか、そんなの本読んでると普通に出てくるんじゃないの?分からない言葉も図書館に行けば全部調べられるし」

「ご相談の前に少し斎藤様に何点か問題を出してもよろしいでしょうか?」

「問題?」

「次の□を埋めてください。□んこ」

「はんこ」

「□フレ」

「デフレ」

「お□んこ」

「おしんこ」

「□ックス」

「ソックス」

「せいじょう□」

「せいじょうき」

「素晴らしいですわ!」

「?」

 どうやらこの斎藤コナン。ガチである。

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