廿日陽介に関するレポート①

 廿日陽介(はつかようすけ)と言う少年は、監視対象である。


 当初の評価と相反して、彼は大きな才能を秘めた学生と評価するとともに、その危険性について大きく考慮するべき人物である。


 当初、彼の将来性は非常に低いものと判断していた。理解力は低くはないが魔術においては、ある種の障害を抱える劣等生である。

 それは魔術構成障害のなかでも、魔術による事象を引き起こす際に、イメージを伴うものに大きな障害を有するものであり、彼の生み出す多くの魔法は有形力を持たない。

 実際のケースを例に出すと、もし彼が燃え盛る炎を具象化した場合、それは熱のない炎となる。何かを燃やすことはできないし、もちろん何かを傷つけることもない。

 魔術を使った戦闘において、彼の才能は最低レベルということが出来る。

他にも様々な魔術の実技において、数多くの失敗を繰り返している。


 だが、その評価は早期に覆ることになった。

 彼は入学1年目にして、第2級指定秘匿魔術を修得している。

 そのレベルは高いとは言えず類似する魔術も多くあるものの、その魔術が完成した暁には第1級の指定を受けるうるものであり重要性は高い。

 しかしながらその魔術は年齢に対して、見合わない成果であり、またあり方であった。


 その魔術の名を、彼は『ハーメルン』と名付けている。

 

 『ハーメルン』は非常に有用な能力であり、完成すればその価値ははかりしれない。

 しかし、それを構築しようと計画する頭脳と人格は、どちらの側にでも傾きうるものである。彼の魔術師としての今後のありように注目し、逸脱する恐れがあれば拘束、あるいは処理する必要性も考慮するべきである。

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