15回目:夜:闇の普遍の僕ら

 かさり、こそり。

 あそこでここで上で下で。どこかでかすかな音がする。

「博士」

「うむ」

 かすみ網を大きく構え、虚光を映す眼鏡を透かす。

 ぼんやりほのかに輝く世界。うすらと浮かぶものの影。

 星の光すら届かない、闇の彼方を睨み据え。

「いますかね」

「いる、とは観測可能であること」

 ほれ、と博士は腕を振る。ばらりと散るのは。

「観測可能、とは電磁波との相互作用の証明であり」

 にゃーん!

 どこからともなく響いてくる。空から地から僕の中から。

「太陽たる観測者が普遍を拒絶する証左でもある」

 博士が示し、かすみ網を。


 虚光が消える。現実が凝る。

 すくりと延びた陽光が、三角耳の小さな影を。


「やあ、箱が開いたね」

 そして僕らは、存在する。

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