14回目:音:僕
日常はどこへ行っても騒がしい。
昼間の街は言わずもがな。人々が眠りに落ちる夜ですら電車は重い体を走らせている。街道を行く多気筒バイク。時々混じる救急車のサイレン。渦巻く風に、煽られた木々が騒ぎ立てる。
*
逃げたかったわけじゃない。ただ。
*
重さとともに扉が閉まる。肌で感じる減圧の事実。それさえも徐々に遠くなり。
視界の色はグリーンへ。目の前の扉に切れ目が生まれ、やがて世界が僕を迎える。
目を閉じる。
どくりどくりと僕自身から聞こえてくる。
完璧な静寂の中、静寂を破る生きる音が。
「ここにいる」
ヘルメットの中わずかな空気を媒体として。鼓膜の奥、頭蓋をわずかに震わせて。
「僕は、ここに」
*
僕は僕をようやく見つける。
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