13回目:お盆:心残り

 すれ違う派手な姿をふと目にし、私は思わず足を止めた。

 そんなはず無い。気のせいだ。

 先へ行こうと足を出し。結局きゅるりと向きを変えた。


 見て見ぬフリがこの場のルール。

 覚えのある顔だったとしても、声をかけてはいけないよ。


 でも。


 派手な兜を目印に、かろうじて見える影を追う。

 炎天下のアスファルトの上、ようやく追いつき認めた顔は、青白くもこの上もなくイイもので。


 声をかけるのを諦めた。


 *


 夕空をナスの牛がのんびり見上げる。

 日焼けていない不機嫌顔が、仏壇からこちらを見ている。

「心残りは、もうないですか-?」

 コスプレするまで死ねないなんて、確かにぼやいていたけれど。

 送り火代わりの線香花火が珠を結んでぽとりと落ちた。


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