12回目:願い:define

 殻の中で受精卵はくるりと回る。動物極を上に向け、発生しようと仕組みのままに。

 植物の種は待ち続ける。温度を光を雨降りを、発芽に最適な瞬間を。自動的な反応に乗せて。

 決められた動植物を死なないために摂取する。弱肉強食と呼ばれながら、摂理であると言われながら。本能という定義のまま。

 生まれたばかりの赤子は、第一声で主張する。ここにあること。生きるのだと願うこと。


「生きることが願うことと等価なら」

 陽に溶けそうな笑顔で紡いだ。

「願わなければどうなるだろうね」

 どういうこと?

 私の疑問を君は確かに受け止めた。柔らかな笑みのままに目を閉じて。

 陽射しが揺らぐ。見返した窓の脇には、一枚の──。


 私の願いは、空へと溶けた。

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