12回目:願い:空の中の飛行機
じぃわじぃわと蝉が啼き、陽炎の中でお姉さん用務員は水を撒く。
兄ちゃん先生は黒板を叩く。白い点を中心に、幾本もの同心円が教室の僕らを見下ろしている。
「音は空間を伝わっていく。距離の三乗に比例して減衰するけど、ゼロにはならない」
「声ちっさくっても届くっつーことですかぁ?」
間延びした声に頷いた。
「雑音に紛れてしまうけどね」
じゃぁ。委員長の甲高い声。
「みんなが一斉に同じこと言えば、空の上にも届きますか?」
遠く高くきぃんと聞こえる。見上げれば蒼にすらりと伸びる白い雲。
例えば、七夕の夜に織姫と彦星が会えますようにとか。
大人たちが早く帰ってきますように、とか。
僕らの願いが詰まった空の中を飛行機が飛んでいく。
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