12回目:願い:願いの力

「言葉は音」

 蝉の声が響き渡る入道雲の映える空を見上げて、一番若い叔父は言いました。

「音は波で、波は力」

 わかるかと聞かれたものの、幼い私は赤い紙をもてあそぶ叔父を、きょとんと見上げるばかりでした。

「力はそこにあるもので」

 ごうごうと音を立てて、編隊を組んだ飛行機があっという間に過ぎって行きました。飛行機を見上げた叔父の薄く笑んだ横顔を、

「何時か誰かにきっと届く」

 大きな手が降ってきたことを覚えています。

「おほしさまにも?」

 私の小さな問いかけに、叔父の瞳はふっと柔らかな弧を描きました。

「千代が願えば」


 だから私は今日も流れ星へと願うのです。

 叔父が私の頭をそっと撫でてくれることを。

 遠い南から今帰ったよと。

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