11回目:雨:豪雨

 少しばかり高いビルの上に立つ。

 生温い風に刺すような冷たさを感じたら、時を逃さずそれを放つ。

 ヘッドセットをオンにして視覚を電子に明け渡せば、街が眼下に遠ざかる。

 手元の操作で空を目指す。マイクは風音を拾い続ける。

 肌に纏い付く重い風は視界と共に滴に変わり、あっという間に白濁し。

 姿勢制御はフル稼働。右へ左へ上へ下へ。揺れる視界に尻餅ついて、さらにローターの回転数を。

 まだ足りない。持て。もう少し。あと。

 ──抜けた!

 視界を埋める大粒の氷晶、舞い飛ぶ水滴、波打つの壁雲、その向こう。


 光り、のたうち、昇り、弾ける。

 幾筋もの、光の龍を。


 バチリと視界が暗転し。

 セットを脱ぎ捨て見上げた空から。


 巨大な雨滴が落ち始めた。

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