11回目:雨:豪雨
少しばかり高いビルの上に立つ。
生温い風に刺すような冷たさを感じたら、時を逃さずそれを放つ。
ヘッドセットをオンにして視覚を電子に明け渡せば、街が眼下に遠ざかる。
手元の操作で空を目指す。マイクは風音を拾い続ける。
肌に纏い付く重い風は視界と共に滴に変わり、あっという間に白濁し。
姿勢制御はフル稼働。右へ左へ上へ下へ。揺れる視界に尻餅ついて、さらにローターの回転数を。
まだ足りない。持て。もう少し。あと。
──抜けた!
視界を埋める大粒の氷晶、舞い飛ぶ水滴、波打つの壁雲、その向こう。
光り、のたうち、昇り、弾ける。
幾筋もの、光の龍を。
バチリと視界が暗転し。
セットを脱ぎ捨て見上げた空から。
巨大な雨滴が落ち始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます