9回目:花:沈丁花の幻
「宗教的解脱には香りが不可欠とされてきた」
麻薬の効果さ。美貌の教授、木元香苗は黒曜石の目を細めた。
「神隠しの社は今日も健在」
歩む先、沈丁花の中に社があった。手に持つボトルがちゃぷりと揺れた。
「神隠しの別の解釈を知っているか。消えたのではなく」
風が巻く。酩酊を感じるほどのその。
手を引かれた。引いた少女は香苗へ笑み。
香苗は緩く首を振った。
「君は幻。私が現実となったから。ねぇ」
振り返れば、若い男が無様に尻餅をついていて。
「子供が沢山いるんだ。教え子っていう手のかかる」
だから。
ボトルの中身をぶちまける。マッチを一本擦り投げた。
見つめる少女へ、淡く確かに。
「さようなら、『香苗』」
少女と炎に、背を向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます