失った携帯 2

 5月30日の16時の少し前に私は渋谷に到着した。

 タカヒロは大学の帰りで学校から比較的近いということと、携帯ショップで買った方がいくらか安いということでタカヒロの知っている渋谷の店に行くこととなった。



 一夜を共にしてから二人が会うのは今日が初めてで、その上セフレ宣言をしてしまった私はどんな顔をしてタカヒロに会えばいいのか分からなかった。

 心の中でアタフタしていたけれどジッとうつ向いたままタカヒロが待ち合わせ場所に来るのを待った。

 すると いきなりタカヒロが目の前に現れた。










 タカヒロ 「お待たせ~。

 じゃー行くか(^ ^) 」





 タカヒロはごく自然な感じに声を掛け、かと思いきや、すぐに案内を始めるべく先に歩き出したので私は慌てながらタカヒロの後を追った。

 タカヒロの不意打ちの登場にドキーッ!としたけれど、アッサリとしたタカヒロの態度を見て何だか拍子抜けしたような、でも変にしくもなくてホッとした。

 安心したのもつかで、都心に慣れていない私にとって渋谷の街はジャングルそのもので、人にぶつかりそうになったり足を踏まれそうになったりと歩くだけで四苦八苦だった。

 タカヒロを見失わないようそばを歩こうとするけれど人混みは容赦ようしゃなくこちらに向かって押し寄せてくる。






 た、タカヒロの腕を掴みたい!

 許せるものならタカヒロと腕を組んで歩きたいですぅ!あせ

 せ、せめてタカヒロの上着のすそだけでも掴ませてくだされぇぇ!! ( ´ Д ` ; ≡ ; ´ Д ` )

 と思うけれど、そんな大胆な行動を取れるはずもない私は、タカヒロを見失わないよう尾行びこうをするかのように必死になって付いていった。

 はぁはぁと息切れしながら付いていくさまは、もはや変質者に近かっただろうwww

 少しは話をしていたと思うけれど何を話していたのか全く覚えていないくらい都心の荒波におぼれかけたワタクシメだった。



 満身創痍まんしんそういでようやく携帯ショップに辿たどり着いたけれど、更なる試練が待ちせていた。

 私はとてつもなく優柔不断なのだ。

 選ばなくてはいけない場面に出くわすと その時の自分にとって一番ベストな物をGETしないと気が済まない性分しょうぶんだった。

 私は今回も1時間以上も掛けて携帯電話を吟味ぎんみした……かったのだけれど、愚民であるワタクシのためにイケメン王子の貴重なお時間をくわけにもいかないので今日は早めに決めてしまおうと思った。



 30分が経過した頃、










 タカヒロ 「…おい、決まったか?…。」



 と重々しいまでの低音ボイスが背後から聞こえた。










 実乃果 「ひぃぃぃーッッ!

 き、決まりましたぁぁぁッ!! 」



 私の全細胞が一斉にビクーーッ!となった。

 バイト中のタカヒロ(ストイックバージョン)を彷彿ほうふつとさせるその声に私は慌てて返事をした。





 稲妻が落ちるぞー!!

 地割れが起きるぞー!!

 海が割れるぞー!!

 もはやイケメン・タカヒロは王子ではなく破壊神になられるご様子だった。

 今のタカヒロを完全体にさせてはいけない‼︎ と悟った私は、手にしていた携帯電話を即座に受付カウンターへと持っていき契約をした。










 実乃果 「お、お待たせぇ(^ ^; 」





 と契約を済ませた私は声を掛けながらタカヒロに近寄った。

 神になりかけたタカヒロ様から最小限の被害で地球を救えた。

 …はず……なのだけれど、そこには無口なまま足早に帰ろうとするタカヒロの姿があった。



 チョッと怒ってます…よねぇ……。

 それともかなり怒っていらっしゃる…のですかぁ……。

 タカヒロの方をチラチラと見るけれどもタカヒロは私の前方を歩いていてどんな表情をしているのか分からない。

 不安にられながらもタカヒロと帰りの電車に乗った。

 何も声を掛けられないままおびえていると、しばらくして










 タカヒロ 「おめぇ、なげぇよ……。

 まぁ携帯買えて良かったけどな(^ ^) 」





 と少し怒りつつもイケメン・タカヒロがちょっぴり微笑んでくれた。

 やはり不安は的中していた模様だけれど、タカヒロが見せた笑みに私の細胞達は堪らなくキュンキュンしてしまい一斉にデレ~となった。

 全く単純なヤツラでございますwww

 ご機嫌を取るように私よりも先に新品の携帯電話をタカヒロに触らせてみた。










 タカヒロ 「俺が一通り設定してやるよ( ^ー^)♪ 」



 と得意気に操作をし始めたタカヒロ。



 今その携帯にはタカヒロの指紋しか付いてないんだなぁ(*´ω`*)

 正確には店員さんと私の指紋も多少なりとも付いているのだけれど、実乃果eyesアイズにはタカヒロの手からクリーナーと上書きの作用が働いているように見えたwww

 タカヒロ好みにカスタマイズをされ、タカヒロの指紋もそこかしこに付いたその携帯は私の宝物になること間違いなかった。

 携帯を受け取った私はルンルン気分で地元の駅で降り、「今日は付き合ってくれてありがとね(^ ^) 」と言ってタカヒロとバイバイをした。



 この携帯の存在を知られず彼氏の前から消えようと考えていた私は、じかに彼氏のところには帰らず、契約書のたぐいを実家に置いていく事にした。

 そして携帯本体は常に私とあるため、彼氏と居るときは完全に電源をオフにするという事をきもめいじた。





 契約してメールが送れる状態になった私は早速タカヒロにメールを送ってみた。










 実乃果 『実乃果だよぉ♪

 早速メール送ってみたけどちゃんと届いてるかな??(^O^) 』










 タカヒロ 『ちゃんと届いてますよ(^O^)ノ

 お前のメールバージンは頂いた(笑)

 今度は大事に使うんだよ(^ ^)v 』





 とすぐにタカヒロから返信がやって来た。



 あいや~☆

 私の大事なバージンをタカヒロに奪われてしまいましたよぉ ⁄(⁄ ⁄•⁄ω⁄•⁄ ⁄)⁄

 奪われてしまいましたぁ♪しまいまーしーたーーぁぁぁ〜♬ www

 なんて素敵な響きなのかしら〜(〃 ∀ 〃)

 そういやタカヒロ 気持ちよかったって言ってたしなー( ⑉¯ །། ¯⑉ )グヘヘ

 と、あの夜の情事じょうじを思い出しながら妄想もうそう莫大ばくだいに膨らまし布団の上でもだえ狂ったwww

 それはまさに殺虫剤をかれて瀕死ひんし状態のゴ◯そのものだった。

 それくらい気持ち悪い物だったと改めて自覚するワタクシメだったwww





 そんな私にも運命の岐路きろに立つ日が目前に迫っていた。

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