もしかして翻弄されてる? 3

 それは突如としてやってきた。



「今日バイトが終わったら店の外で待ってるから。」と、タカヒロがいきなり私を呼び出してきたのだ。

 何だろう?とは思ったけれど、詳しくは聞かずに私はそれを承知した。

 この日のバイトが終わって店の外へ出ると、空には重たい雲がかかっていて今にも降り出しそうな雰囲気をかもし出していた。

 それを見た私は急いでタカヒロの元へと向かった。

 着いた先には何だかいつもと違う感じのイケメン・タカヒロがいて開口一番に私に問い掛けてきた。










 タカヒロ「 俺は、どーしたらいい…? 」










 実乃果「 え!?

 タカッチ、一体何があったの!? 」










 タカヒロ「 俺はこの先、どう生きていったらいいのか分からないんだ…。

 いっそのこと……死んだ方が楽なんじゃないかと思ったりしてさ……。」




 タカヒロはうつ向きながら、今にも泣き出しそうな声で応えた。










 実乃果「 タカッチに何があったのかは分からないけど……




 けど、もしタカッチが必要とするなら…




 たとえ火の中だろうと水の中だろうと私はどこへでも飛んでいくから!




 だから……




 死んだ方がいいなんて言わないで!!! 」










 私はタカヒロのそでを力強く握りしめ、泣きじゃくりながら応えた。

 その言動にビックリしたのかタカヒロはパッと顔を上げ、私の顔をじっと見つめてきた。

 タカヒロの表情は唖然あぜんとしていたけれど、すぐに一転して、優しく穏やかな表情で私に微笑みかけてくれた。









 私は泣きながらガバッ!と布団から起き上がり、そして、現状を確かめるかのようにつぶやいた。










 夢?だったんだ…。



 わたし今……泣いて……る?



 何でこんな夢…

 切なすぎるよ……。



 でも……現実じゃなくて良かった。



 タカヒロはあんなこと言ってない。

 ホントに、ホントに良かった! …ひいいっくッ……







 夢だったと確信した私は安心してボロボロと泣いた。

 泣いたまましばらく動けないでいると、“夢で見たタカヒロの微笑んだ顔” がふっと思い浮かんだ。





 ねぇ……あれにはどんな意味があったの?

『もう心配はいらないよ。』ってことなの?

 それとも………!



 否定的な言葉が脳裏をかすめたその時、胸がギューーーッ!と締めつけられた。

 全身は大きく震え、私は声を殺しながら激しく泣いた。

 タカヒロの “死” を連想してしまうと辛すぎて何もかもが止まらなかった。

 そして、もうどうしようもなくタカヒロを好きになっていたんだと、今更ながらに思い知らされた。







 どれくらいの時間が経過しただろうか。

 ようやく泣きやんだ私は現実を見据みすえてゆっくりと思いをめぐらした。









 タカヒロには……いつものクシャクシャな笑顔で笑っていてほしいよ。

 そしてお願いだから私の前から居なくならないで…

 タカヒロでいっぱいになってる私を置いて消えちゃわないでよぉ……



 ……。



 ……………。



 …………うん…決めた。



 タカヒロに告白しよう。



 だってこの先、タカヒロとずっと友達でいられる確証なんてどこにもないじゃない。

 バイト仲間ってだけで繋がってる私とタカヒロだよ?

 タカヒロがバイトを辞めたら私と連絡をとる理由もなければ義理もないし、だからいきなり連絡を絶つなんてこともあり得る話じゃん。

 でも『タカヒロをこんなにも好きになった』という気持ちを伝えたら、バイト仲間の域を超えて、もっと私を見てくれるかもしれない。

 こんな私でもタカヒロの心を動かせるかもしれない。

 もしかしたら本当に付き合えるかもしれないし、だったら告白する価値はある……よね?




 私は小さな望みを抱き、そして自分を後押ししながら告白する決意を固めていった。







 ---------------



 さてと、告白を決意したのはいいけれど、たしてどうやって告白をしたらいいのか迷った。

 小っちゃな脳ミソであれこれと考えた。

 考えぬいて出した結論は、もうメールで伝えるしかないと思った。



 おまえ……

 ここに来て真っ正面からぶち当たる度胸もないのかぁッ!

 告白なんてすんな!マジで止めちまえ!! (ꐦ ¯ㅁ¯ )

 って怒らんでくだされぇ★

 なにせタカヒロに電話もしたことがないチキンなワタクシメですよ?

 頭に生やしたラブフラワーを摘んでは密かに喜びにひたっている愚民ぐみんのワタクシメが、イケメン王子であるタカヒロを目の前にして真剣な話告白をしようものならば口から魂が抜け出て確実に死んでしまいますよぉぉぉ★

 皆様、神様、仏様ぁぁ!ワタクシはまだこの世に居たいのでありますぅぅぅ(ノΔT)

 ゆえに迷える子羊を聖母マリア様のような寛大なお心で見守っていてほしいのでありまするぅぅぅ★





 そういうワケで私なりにメールの文章を考えた。

 耳から脳ミソがこぼれ出ちゃうんじゃないか?って思うくらい煮詰めて考えた。

 数時間かけて何回も紙に下書きをし、のちに改めてメールの文章を打ち込んだ。

 完全にアナログな奴ですwww



 そしていよいよ送信ボタンを押すときがきた。

 フルフルと緊張で震える携帯電話をシッカリと両手で支えながら、いざっ送信ッ!





 ポチッ!





 ……送信完了。





 科学が進歩したとはいえ、送るときって結構あっけないよねぇwww

 ちなみにメールの中身は以下の通りである。







『 タカッチがバイトを辞めるって聞いて私すごく辛くてね、でも言わないでいるのはもっと辛いから今言うね。

 実は私ね、タカッチのことがずーっと前から好きだったんだよぉ。

 もしかしたら薄々気がついてたぁ?(*^ ^*)

 それでね、タカッチが良かったらお付き合いしたいと思ってるの。

 返事はタカッチと会ったときに直接聞きたいな~と思ってるんだけどどーですかぁ?(^ - ^) 』




 ………。



 ……えぇ、皆さんの突っ込みたい気持ちは重々承知しております。

 煮詰めて考えた割にはこんだけかい!?

 下書きに数時間も掛けるお前はドアホゥかぁ!

 タカヒロをこんなにも好きになったっていう気持ちを伝えるって言ってたのに大して書いてねぇじゃねぇか!とお声が聞こえてくるようであります。

 ホントにホントーにすみません★

 実はあの悪夢のことや、想いのたけを思う存分つづってしまおうかと考えたんですが、『ミノさんよぉ。こりゃ~あまりに重すぎてイケメン王子が窒息死してしまいますぜぇ?( •´∀•` )ヘッヘッヘ~ェ 』と、どこからともなく声が聞こえてきたワケで90%以上も削った次第でございます。

 私は別の人格をも隠し持つ、羊の皮を被ったチキンですわ。

 皆様ぁぁああ!こんな迷えるチキンな子羊を聖母マリア様のような…(以下省略)

 ※お見苦しいので自主規制させて頂きます。○┓ペコリ





 私は、いつ来るかも分からないタカヒロの返事を待つことにした。

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