もしかして翻弄されてる? 2
いきなりだけれど居酒屋にはドリンカーと呼ばれるポジションがある。
口には出さないけれど、多分バイトの皆もドリンカーの仕事はしたくないはずだ。
このドリンカーとはカウンターごしに飲み物を作る場所のことであり、また、それを作る人のことをも言うのだけれど、ドリンカーの仕事は人一倍やることが多い割には大抵一人でやらなくてはならないのだ。
終電前までは鬼のような大量のドリンクを作り、下がってきたグラスや灰皿を手際よく手洗いで洗って棚や冷蔵庫にしまう。
それだけならば多少の器用さがあればこなせるのだけれど、大変なのは終電が終わったあとの後半戦だ。
営業が終わる数時間前になると床やシンクなどの広い所の掃除をしたり、ソフトドリンクが出てくるノズル部分などを分解して細部まで掃除をしたり、翌日の営業の仕込みもしたりする。
勿論営業中なのでそれらだけに集中できるはずもなく、オーダーが入ったらすぐさま作らなければならないし、下がってきた洗い物を放置していると後々のオーダーや退社時間に差し支える。
翌日に使うであろう生ビールの樽の補充も、かなり重いのに一つ一つ手作業で、
時には人員不足のためにドリンカー自ら客席にオーダーを運ばなければならない。
これらを一人でチャッチャカこなすのだ。
そして全て水洗いだから冬場の今は厳しいし、そのうえ洗剤が強力すぎてアカギレもしょっちゅう起こす。
全くもって良いことがない :(´◦ω◦`): ガクブル
私はこの後半戦からの出勤組なのだけれど、他にもポジションがあるにも関わらず、
最初にも書いたけれど、私の作業は他の人よりも遅いしヘマも多いので仕事ぶりを買われてそこに配属されている、ということは決してないのだ。
ちなみにドリンカーをやりたくないから今日は仕事を休みます、というようなズルはできない。
出勤しないとその日のポジションが分からないよう店長に仕組まれているからだ。
そんな私は
うぉー!今日もドリンカーかぁ★
まさに一人戦場ぉぉwww
ミノ大佐、今日も無事に帰還できるのでありますか!!?
いや…今日は週末だから腕の一本や二本持っていかれる覚悟は必要だろうな…。
ミノ大佐ぁぁぁ!! ワタクシ最後までお供させて頂きますぅぅ!! (ノΔT)
などと心の中で一人芝居を打ちながらも与えられた仕事を一生懸命にやるのだった。
そんなドリンカーは
それを知っている皆は、水分補給用の飲み物を取りに来てはドリンカーに気をつかって素早く退散するのだけれど、タカヒロが取りに来るときだけは私の背後に立って多少の長居をしていった。
タカヒロ「 バイト中にお酒飲んだりしてないかぁ?(^O^) 」とか
タカヒロ「お!ちゃんと生きてるなww 」
などと言っては狭い空間でくつろいでいた。
時には私の頭をポンポンしたりもするので、もうこっちは仕事どころではない。
その度に私は
実乃果「あーーーもぅ!www
狭いから後ろに立つなぁぁwww 」とか
実乃果「今は忙しいんだぁぁwww
あっち行けぇぇ!www 」
などと照れ笑いを浮かべながら憎まれ口を叩き、タカヒロの背中をえぃえぃ!と優しく押しながらドリンカーから追い出した。
にょにょにょぉぉwww
ホントはもっと居てほしかったし、もっと濃厚に絡んでほしかったなりよぉぉぉwww
今日は頭ポンポンされちゃったし、もう胸キュンのふにゃ~んて腰
店長すまん!マジでもう仕事にならんわ _:(´ཀ`」 ∠):_ …
……あらら?
ポンポンされた頭からお花が咲いちょりますよ?
ヨシ!このお花をラブフラワーと名付けようじゃないですかwww ԅ(,,´﹃`,,*ԅ)❤︎グヘヘヘ
などと、勝手にキモさ満点にヒートアップするワタクシメだった。
孤独で地獄のようなドリンカーを一瞬にしてパラダイスにしてしまうとは、まさにアホ界の頂点を極めたと思うwww
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タカヒロとアサコが別れたと知ってからは私の心も徐々に解放できるようになり、タカヒロが絡んでくれることで多少なりとも自分に自信がついてきた。
タカヒロと絡める現実はホントに楽しくて、心の底から嬉しく思った。
そしていつまでもこんな日がつづくと信じていた。
いや、無くなるなんて事すら考えもしなかった。
私が20才、タカヒロが23才の2月のこと。
バイト仲間からの知らせで私は血の気が引いた。
タカヒロが、バイトを辞める………?
これは一体何の冗談かね?
エイプリルフールにはまだ早いってばぁw
ていうかそんな冗談、タカヒロに悪いでしょぉ?www
私は半信半疑だった。
むしろ嘘だと思った。
これが
5日間くらい様子を見ていたけれど、これと言って良い情報も悪い情報も入ってこなかった。
だから直接メールでタカヒロに聞いてみることにした。
実乃果『 タカッチ、バイト辞めるんだってぇ?
一体何があったのぉ??(^ ^ ; 』
ここはライトに聞いてみた。
タカヒロ『4月から就活が始まるしバイトどころじゃなくなるからな~ 』
タカヒロは23才にして大学3年生だった。
よって来年度は最終学年なので就職活動をしなくてはならなかった。
『 バイトは一社会人になるまでの繋ぎの仕事だ。』
そんな事ちょっと考えたら誰でも分かる事なのに、私ってばどこまでオメデタイ奴なんだ…と自分を
実乃果『なるほどね~(^ ^ ;
就活大変そうだけど頑張ってねぇ(^O^)ノ 』
私は笑顔で
タカヒロから事情を聞いた私は心にポッカリと穴が空き、しばらくボーッとしていた。
けれども、『そっか。辞めるんだぁ。』と再認識したあとは不思議とそれ以上の感情は生まれなかった。
勿論バイトも何ら変わらずに行った。
タカヒロから真実を告げられてから3日ほどが経った日のこと、とある事件が私の身に起きた。
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