オフ会後半
「いいですよね、遊園地」
「はい!」
遊園地を満喫するジェーンとアデリー。
そうこうしているうちに時刻は午後を回っていた。
「それでプリンセスさんったら何て言ったと思います?びっくりしちゃいましたよ」
「なるほどそんなことがあったんですね」
雑談に花を咲かせる二人の耳に不意に聞こえた叫び声。
「今何か聞こえませんでしたか?」
「はい、誰かの叫び声が聞こえたような……」
「声のした方へ行ってみましょう」
やがてそれと思しき場所へたどり着いた二人。
彼女達が目にしたものは……。
「なんですか、あれ。まさかアトラクションじゃないですよね?」
アデリーがそう言うのも無理はない。
大勢のフレンズを乗せた乗り物が乱高下をした挙句空中に弧を描くように爆走する。その光景は彼女にとってあまりに衝撃的すぎるものであった。
「そういえば先週からジェットコースターが動くようになったって噂になっていました!ものすごい速さで走る乗り物だと聞いていましたが、本当だったみたいですね!」
「あのジェーンさん……」
……まさかアレには乗らないですよね?と、そう尋ねようとしてアデリーは口をつぐんだ。
何故か?
ジェーンの目を見ればすぐにわかる。
(憧れのアイドルがすぐそばであんなに目をキラキラさせてるのにそんな無粋なこと言える訳ないじゃないですか)
「アデリーさん」
「はい」
「乗りましょう!」
「はい!」
推しが「カラスは白い」と言えば肯定するのがファンである。
(本当にどうしようもない時って、逆に何故か笑えてきますよね……?)
ジェーンに手を引っ張られてジェットコースターへと向かうアデリー。
その目には一筋の涙が浮かんでいたという……。
そしてその数十秒後。
「あの乗り物、メタルを感じるぜ……」
「おい待てヒゲッペ、あんなの乗ったらひとたまりも」
「ほら、エスコートしてやるぞ」
「いやだああああああああああお乗りたくないいいいいいいいいいいい」
ヒゲッペがキングを引きずりながら同様にジェットコースターを目指すのだった。
「うう……気持ち悪い……」
「大丈夫ですか?すいません、無理言って乗せてしまって」
「こっちこそ……なんかもう……生きてて申し訳ないです……」
乗り物酔いを起こしたアデリーはジェーンに背中をさすってもらっていた。
「お~いキング~。生きてるか~?生きてるなら目ェ覚ませ~」
……近くでものすごく聞きなじみのある名前と声が聞こえた気がするが注意を払う余裕などなかった。
「あんまり激しい乗り物はやめておいた方が良いですね。あれなんかどうでしょうか」
それは「お化け屋敷」と書かれた建物だった。
「いかにもホラーって感じの館ですね。私実はホラー好きなんです」
元気を取り戻した二人はお化け屋敷へと入っていくのだった。
そんな二人の様子を窺う五人組がいた。
「二人ともお化け屋敷に入っていきましたよ。どうします?」
「どうするも何も私たちも行くわよ」
「なあ、この建物かなりおどろおどろしい見た目してないか?」
「フルル、いつまでも限定ジャパリまん食ってないで行くぞ」
「え~」
PPPwithマーゲイである。
ジェーンを追って遊園地まで来たものの、普通に遊園地を満喫してしまい今の今まで二人を見つけられずにいたのだ。
「一度に入れるのは3人までです」
「ですってよ?どうしようかしら?」
「じゃあ私とプリンセスが先に行こう、イワビーとフルルとマーゲイはその後で頼む」
先にお化け屋敷の中に入った二人であったが。
「何だか暗いしじめじめしてるぞ……」
「ね、ねえ何かうめき声みたいなのが聞こえてこないかしら?」
早くもお化け屋敷の雰囲気に圧倒されていた。
するとそこへ―。
「ア……アアア……」
姿を現したのは包帯をグルグル巻きにした血みどろのフレンズ!
「きゃああああああああああああああああああ」
プリンセスが悲鳴を上げる一方コウテイはというと。
「……」
案の定というか、どこからかチーンという効果音が聞こえてきそうなくらい見事な気絶をきめていた。
「ちょっと!気絶してる場合じゃないでしょ!私一人で出られる訳ないじゃない~!?」
……余談だが後にこの血みどろのフレンズは「これほどまでにいい反応をいただけたフレンズは他に居なかったよフフッ」などと周囲に語っていたという。
一方イワビー、フルル、マーゲイはと言うと。
「世の中には吊り橋効果なんてものがありまして、お二人は私のことは気にせず絆を深めていただければ……ウヘヘ」
「ねえイワビー。あれ何~」
「げえ!?ゾンビじゃねえか!?っていうかお前ももっと驚けよ!?」
「ああ……お化け屋敷でもいつも通りなお二人、素敵ですぅ……」
「お前も平常運転だな」
ぶれない三人は難なくお化け屋敷を踏破するのであった。
「何だか今にも暗がりから何かが出てきそうです……」
「思った以上に雰囲気が出てますね」
お化け屋敷に入ったジェーンとアデリーはそれぞれおっかなびっくり、あるいはワクワクした様子で歩みを進める。
二人が曲がり角に差し掛かったところ―
突如、何者かがバッと立ちふさがった。
「キャアアアアアアア!!!」
上がる悲鳴。どすんという尻もちの音。
「……あの、なんであなたが驚いてるんですか?」
しかしそれはジェーンでもアデリーでもなく不意に姿を現したフレンズによるものだった。
「すみません、あんまりにも怖かったものですから……」
いかにもオーソドックスな幽霊らしい白装束を身につけた彼女はどうやらタヌキのフレンズらしい。
「怖かったって……一体どうして?」
「あの、もしかしたらなんですけど……」
ジェーンは何か気が付いた様子である。
「アデリーさん、そこをちょっとどいてもらえますか?」
「はあ、構いませんけど」
怪訝に思ったアデリーだったが、今さっきまで自分の立っていた場所に立つジェーンの様子を見て得心した。
「なるほど、これは確かに……」
「ちょうど足元あたりにライトがあって、それで今の私がまさにそうなんですが、顔が下から照らされる形になってそれが怖く見えたんでしょう。ですよね、タヌキさん」
「は、はい。そうなんです。私よりよっぽど幽霊みたいに見えました」
(あの、私思いっきりディスられてませんか?)
「まあ、理由は分かりましたけど驚かす側が驚いちゃうのはどうかと思いますよ」
「うう……本当にごめんなさい……」
ますます小さくなるタヌキ。
アデリーとジェーンは気まずい面持ちで顔を見合わせるのだった。
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