第3話
数秒後、聞こえたのはハルの笑い声。
「ユメちゃん、大丈夫だよ」
その声に、ゆっくりと顔を上げる。
目を開けてみると、アッハッハと笑うハルの手に一通の手紙。なんの色気も可愛さもない、真っ白な無地の封筒。
「落ちてきた」
カサカサとハルがそれを開ける。
私は隣からそれを覗き込む。
『ハルへ。
元気にしてますか。
こちらは地獄そのものです。
それでも私は頑張ります。
不安よりも光を信じることにしたので、これはきっとすごく地道で辛いこともあるかもしれないけれど、グリコとダルマさんが転んだをふたつしていると思うことにしました。
じゃんけん、たまには負けてよね、………』
そこまで読んだところでハルがパタンと手紙を閉じる。
「はいダメ。おしまい」
「えー」
まだ途中なのに。
悪戯な笑みを浮かべるハル。
「誰から?」
「友達」
「何これ。決意表明?」
「うん」
「地獄ですってよ」
「ですってね」
ふふふ、と笑う。
特に面白いことはないけど。
「ていうか、こんなもんなの?眼って。もっとでっかいのが落ちてくると思ってた」
「ズドーンって?」
「ズッドーンって」
「人によるんだよ」
「ふぅん」
私も空を見ようとして首を動かしたらハルに止められた。頭をグッと抑えられる。
「ユメちゃんは、ダメだよ」
「なんで」
「なんでも」
「ケチ」
「なんとでも言え」
アハハと笑って、二人でまた歩き出す。
「ユメちゃんが見たら多分、3トントラックが落ちてくるよ」
「ヒノノニトン?」
「だから、3トンだってば」
「トントントントン?」
「ヒノノニトン」
くふふ。あはは。
「ジャイアントパンダがいいなあ」
「パンダ好きだっけ?」
「ジャイアント?」
「馬場?」
「アポー」
くふふ。あはは。アポー。アポー。
「明日一緒に見ようよ」
「明日なら私も見ていいの?」
「卒業してからならね」
「スタバ行く?」
「行かない」
「珍しい」
「僕はもう、ミスドにもスタバにもいかないよ」
「ふうん」
二人並んで歩く楽しい帰り道。
いつものことのようにも感じたし、なんだかとても懐かしい気もする。
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