第1章---------「嘘つきたちは夜の中」

悪魔のこさえた鋼鉄の鎧、そいつが空にはめ込まれている。

そんな暗い夜だった。月は小さく孤独にて、舌で転がすと冷たい味。

ロートラウトは、夜着に上着を重ね着て、寝室からすべり出た。護衛たちには硬貨をやった。

外に出た。

心地よい春の風は、湿り気を帯びて頬をなぶる。中庭の廊下を出たところで、目標が見えた。


「女中たちは寝てるか」

「当然だとも。それよか他の奴はどうだ?親父は、使用人は」

「大丈夫だって」

「君、前にも行ったことがあるの?」


ひそひそと、声が聞こえる。

闇がかすかにうねった。使用人の息子たちだ。知っている影ばかり。

その、浮き足だった、見世物小屋をのぞく金持ちの贅沢。そんな様子に、ロートラウトは胸がざわめいた。



「そろそろか、行こう」


何が起こる–−−−


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る