第1章---------「転機」

ロートラウトは12歳になった。

大柄だった身体はすらりと伸びた。相変わらずの大柄であったが、岩のような重量感を捨て、生きのいい張りを持っていた。

顔つきも穏やかになった。競争の中に凝り固まった目元は、精悍な光にまぶされていった。勝気な顔に、ほどよく内向的な影が射した。

友人たちにも変化があった。

ロートラウトはサル山には時折顔を出していた。

年上の少年たちはもういなかったが、ビンセはじめ同い年の子らは残っている。大人に近づく少年らしく、皆平等に互いの心の窓を貼りだしていた。

一方使用人の子供達は口数が減り、時々妙に浮き足だった感じで近づいてきた。ロートラウトの骨の細さに、心から驚いているようだった。

家庭教師は二度変わった。一人目は流行病で退職し、二人目はロートラウトと絶妙に気が合わなかった。厳粛な信教者は、サル山の申し子男装少女の存在を雰囲気から嫌った。三人目はこれといった特徴のない中年の男だが、建設的に教え子の学びに寄り添ってくれた。彼はロートラウトが好奇心の種を持つのをみるや、文法のテキストをことばパズルに改造してしまった。



母が妊娠した。

そのことは、風の知らせで聞いた。

父でも母でもない。ましてロミルダですらない。おしゃべりスズメの口から、厨房でさえずっているのを聞いた。

ロートラウトは身内の秘密にたいそう憤ったが、自分は大事な時期ーー教養を身につけるべき年なのだから仕方ない、と思った。神のお与えになった命だ、このタイミングにもなにか意味がおありになるのだろう。

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