消えたハンドさん
「ハンドさ〜ん!」
「ハンドさ〜ん!」
「ここか?」
「ここか?」
舞台裏を見渡すが、そこにはヴァンの姿しかない。
「どうした、二人して」
「ハンドさんを探してるの!」
「ハンドさんを探してるの!」
双子というだけあって、息もぴったり。一切のズレがない。
「ハンドか、ここでは見てないな」
舞台照明のスイッチなのか、素人目には何がなんだか分からないようなスイッチをいじりながらヴァンが答える。
「そっか〜」
「そっか〜」
ハンドが舞台裏にいない事が分かると、二人して駆け足で楽屋の方に向かった。
お昼下がりの温な時間。本来なら各々が個人練習をしている時間だが、テントを移したばかりで次の公演が決まっていないため、皆自由に過ごしている。
「ここか?」
「ここか?」
団員の楽屋がある場所に来た双子は、一つ一つの楽屋を開けては辺りを見渡し、ハンドがいないと分かるとすぐ様次の楽屋の扉を開けて行った。勿論、扉を開ける動作も寸分の狂いなく一緒だ。
「ここにはいないよ」
ウィッチの楽屋は黒一色だ。魔術の本やら、怪しい小道具が所狭しと置かれている。そんな中、ウィッチのともだちである“おもちゃ”達は、お行儀良くに椅子に座っていた。
「そう言えば、見てませんね」
ピエロの楽屋は殺風景だ。テーブルはおろか、ベッドも置かれていない。つまり物が何一つとして置かれていない。双子はそんな事にはお構い無しに、ハンドの故のみ夢中になっている。
「ZZZ・・・」
ネロと団長の相部屋。奥に置かれた一際大きな、お姫様が寝るような豪華なベッドでネロがすやすやと眠っている。二人が入って来たことに気がついていないようだ。部屋に団長の姿は見えず、壁には団長の衣装である緑色の妖精の衣装が掛けれている。
「ここにもいないか」
「ここにもいないか」
そもそも、男性であるハンドが女子部屋にいたら、それはそれは問題である。
「どこだー!ハンドさ〜ん!」
「どこだー!ハンドさ〜ん!」
メインアリーナで叫ぶ二人に、外から帰って来た団長が呆れて話を聞く。
「キリ、マリ、あんたら何してんの?」
「ハンドさんにマジック教えてもらう約束してたから探してるの!」
「ハンドさんにマジック教えてもらう約束してたから探してるの!」
ハンドのマジックが大好きな二人は、この日を楽しみにしていた。二人の瞳がキラキラと輝いているのが見て分かる。その瞳を見て、若いなと感じる団長がいた。
「だとしたら、どっかにいるんじゃない?ハンドの楽屋見てみた?」
「見てない!」
「見てない!」
「そこを一番に探しなさいよ・・・」
そんな話をしていると、舞台袖から一枚のタオルが宙に浮きながら現れた。
「まさか・・・」
「いや〜すまんの〜。風呂入っとったわ」
タオルからは確かにそう聞こえた。そして、わしゃわしゃと髪を乾かす様にタオルが動く。
「あ!ハンドさん!」
「あ!ハンドさん!」
双子も声で分かったのか、タオルを指差しが叫ぶ。
「ハンド・・・、あんた今、服着てんの・・・?」
団長が引き攣ったように尋ねると、タオルの主はこう答えた。
「服か?安心せい。パンツは履いとるで」
「服を着ろ!!!」
そう叫んだ団長の声はテント中に響いたとさ。
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