ともだち
「今日も頑張ったね。みんなありがとう」
そう言って、魔女の帽子を被った少年ウィッチは魔法を解く。
「しかし不思議やな。おもちゃが動くんやもんな」
その声はハンドさんだ。自分の演目も終わり、舞台裏で皆の演技を見ていたようだ。なんせ、手袋を付けていないから、どこにいるか分からない。
「おもちゃじゃないよ、みんな僕のともだちだよ」
そう言うと、ウィッチは少し悲しそうな表情でおもちゃの兵隊を撫でた。
「悪い、そうやったな」
ウィッチが担当するのは、『パレード』だ。しかも登場するのは団員ではなく、ウィッチのともだちである“おもちゃ”なのだ。それも、自分の意思で動くおもちゃ。
ウィッチはその格好から分かるように、正真正銘の魔法使いだ。たまに箒を持っていることもある、大きな魔女の帽子がトレードマークの少年だ。
ネロと年が近く、団長より少しだけ背が高い、これから思春期に入る頃の、大人に背伸びしたい時期の男の子。
そんな魔法使いのウィッチは、元々はこの世界の住人ではなく、こことは違う異世界から来たらしい。そのため、他の団員がどんなに頑張っても使えないであろう魔法が使えるのだ。
「『命を宿す魔法』やっけ?ほんまに凄い魔法使いなんやな」
「まぁね、そこらの魔法使いと比べられちゃ困るね」
「いや、他に魔法使いなんておらんけどな」
ウィッチが命を宿したおもちゃたちがパレードの主役だ。
おもちゃと言っても、兵隊やくるみ割り人形など、人型のものが多く、どこか懐かしいおもちゃを多く集めている。
「この子たちはさ、僕に出来た初めての友達なんだ」
自分の出番が終わると、ウィッチはいつもこんな調子だ。
「でも、そのともだちが最初で最後のともだちじゃないやろ?」
ハンドさんが呆れたように口にする。
「ま、まぁ・・・最後じゃ・・・ないね」
「おっ、なんや、照れてんのか?」
「うるさいな!照れてなんかないよ!くそ!どこにいるんだよ!」
「へへ!どうせ見えへんやろ!」
「そこ!うるさい!!」
二人を指差して注意するのは、やっぱり団長。
「「すいません・・・」」
「今ネロがやってるんだから、見てなさいよ!」
「「はい・・・」」
まぐれだろうか、団長が指差した先には、ハンドさんがいた。
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