夜明け前

 夜明け前の冷えきったこの時間。サーカステントの中では、寝泊りをしている団員が寝息を立てている。


 そんな時間に目を覚ましたのは、まるでお人形さんみたいに可愛らしい少女。


「ん・・・、寒い・・・」


 お姫様の様なパジャマに着こなす彼女の腕には、猫のぬいぐるみが抱かれている。


「まだこんな時間じゃん・・・、寝よ」


 そう言って再び横になるが、なかなか寝付けない様子。


 それもそうだろう。一日中寝ている様な子だ。夜に眠れているのが不思議なくらいである。


「寝れない・・・」


 寝返りをうつ。


「眠い・・・」


もう一つ寝返りをうつ。


「眠い!!」


 遂にはあまりの眠気に、抱きしめていたぬいぐるみを放り投げてしまった。


「いたっ!!何?!?!」


 猫ちゃんが当たったのは、隣で寝ていた団長だ。突然の事で訳も分からず、寝ぼけているのか、辺りをキョロキョロしている。


「あ・・・、ご、ごめんなさい・・・」


「何だ・・・ネロか。ビックリした・・・」


 そう言って再び横になる団長だが、


「眠くない・・・」


 自分と同じ大きさのぬいぐるみが直撃した衝撃で、眠気が冷めてしまったのだろう。目を閉じても一向に寝付けない。


「団長〜眠いのに寝れない〜」


 ネロも寝れない様子。


 仕方が無いので、二人はテントを出た。 




「団長〜寒いね〜」


 寝れないといいながら、今にも寝そうなくらいフラフラのネロ。その腕には、シロサイのぬいぐるみが抱かれている。


「まだ夜だしね。ほら珍しく星も見えるし」


「ん〜目が開かない〜」


「あんたね・・・本当に寝れないの・・・?」


「寝れないよ〜眠いのに〜」


 そう言いながらも首がこっくりこっくり。今にも寝そうだ。


「ネロが起きてるのって珍しいわね」


 夜の公園で星を見る二人。その表情はとても幸せそうだ。

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