マジカルマジックショー

「本日も、この時間がやってまいりました!摩訶不思議、宙に浮く手が送る、魔法の時間をお楽しみ下さい!それではお呼びしましょう!Mr.ハンド!!!」




 団長の活気のあるナレーションの後、ヴァンさんがいくつものスイッチを瞬時に切り替えると、観客の歓声と共にメインステージには白煙が舞い上がり、中央にスポットライトが照らされた。


 そして、そこに現れたのはふわふわと宙に浮く白い手袋。そう、ハンドさんだ。


「相変わらずスゴイ人気だね!」

「相変わらずスゴイ人気だね!」


 双子が声を揃えていう。


「まあ、ハンドの実力は確かだからね。うちのショーの中で一番人気があると言っても過言じゃないかもね」


 上手かみてに戻ってきた団長が言った。


「えー僕達じゃないの?」

「えー私達じゃないの?」


「もちろん、あんたらの演技も人気だよ。それよりも、あいつのマジックショーは凄いんだよ」


 フェアリーサーカス団では、一人一人演目が割り振られている。双子の兄妹は『空中ブランコ』、団長は『オープニング』『エンディング』それと『司会』。そして、ハンドさんは一番人気の『マジックショー』。


「ずるいよなー、ハンドさん」


「だってあの人、透明人間でしょ?」


「ずるいよー」

「ずるいよー」


 お気づきかも知れないが、実はハンドさんの正体は手袋というわけではなく、姿が見えない透明人間なのだ。


 ハンドさんは透明人間であるが故に、変わった能力を持っている。彼は透明人間だからと言って全裸でステージに立っているのではなく、ちゃんと衣装を着ている。しかし、いざ舞台に立って見えるのは、手にはめた白い手袋だけ。これこそが彼が透明人間である理由であり、厄介な所なのである。


 彼は、手先以外の身体で触れたものを透明にする力を持っているのである。


 そのため、服を着ても身体と同様、透明化していまい、姿が見えなくなってしまうのだ。


「ずるいって言われても、あれはハンドの特殊能力なわけだし・・・。まあ、確かにあの能力を使って手品をすれば、観客の度肝を抜かす演技が出来るものね」




「さあ皆さん!本日も現実を超越した、素敵な世界にご招待します。さあ!手始めに!!」


 そう言ってハンドさんが手で虹を描くと、突然空中にカラフルな風船が大量に現れ、天井へと浮遊していったのだ。


 観客の七割が子供であるため、瞬時に歓声が沸き上がる。


「まだまだこれからですよ!!」


 そう言ってハンドさんがパチンっと指を鳴らすと、同時に風船が全て割れ、中からこれまたカラフルな紙吹雪が出てきた。これだけでもテントの中は幻想的な空間と化した。


「「「すごーーい!!!」」」


 客席の子供たち同様、舞台裏で見ていたメンバーでさえ声を上げた。




「ようこそ、魔法の世界へ!」


 そう言って両手を広げるハンドさんの顔は、見えないがきっと満面の笑みなのだろう。

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