魔法使いの俺

@clety

第1話

NPC「この中から好きな職業を選んで下さい」


俺「よっしゃ! 男はやっぱ戦士一択! 迷わず戦士を……、ハ、ハ、ハァーックション!」


ポチッ


俺「ああ!? カーソルが一つずれた!!」


NPC「魔法使いですね? はいORいいえ」


俺「いいえに決まってんだろ……、って焦って↓キー二回押ささって『はい』にしちゃったよ!?」


NPC「あなたはこれから魔法使いとして……」


俺「あーあー、もう何も聞こえませーん」





俺「ハァ……、何が悲しくて非力な魔法使いなんかやらにゃならんのだ」


女「そこのあなた」


俺「ガチムチになって無双する予定だったのに。ガチムチ無双」


女「ねえ、ねえってば!」


俺「痛っ! 痛たたたた。耳を引っ張るな」


女「聞こえてるのなら無視しないで下さい」


俺「……何か用か」


女「私一人では手に余る魔物がいるのです。どうかお手伝いしていただけないでしょうか」


俺「えーなんでー? それって俺になんかメリットあるのー?」


女「経験値が入ります。そうすることによってレベルが上がり、強くなれます」


俺「でもその魔物ってお強いのでしょう?」


女「安心して下さい! ちゃんと倒せますよ! 私は僧侶なので、魔物にはあまり強くありませんが、回復魔法が使えます!」


俺「なるほど、そこで俺の出番って訳か」


女「その通りです」


俺「しょうがねえ。強くなるためだ。やるなら今しかねえ」


武器防具屋「そんな装備で大丈夫か」


俺「大丈夫だ、問題ない」





女「話になりませんでしたねえ」


俺「やっぱきちんとした装備は必要だったか。おっちゃん、一番いい装備を頼む」


武器防具屋「あいよ。おめえさんにはこの『ひのきの杖』と『麻布のローブ』ってところだな」


俺「はあ?? そんなしょっぱい装備で魔物が倒せるかよ。その剣と鎧をよこしな」





女「まったく話になりませんでしたねえ」


俺「まさか装備すら出来ないとはな。これだから魔法使いってやつは」


女「魔法使いって確か知能が高いはずですよね」


俺「戦士志望だったんでな。そこは期待するな。それよっか金がない」


女「あなたがバカなチョイスをするからでしょう」


俺「今バカって言ったか」


女「その剣と鎧売っちゃって、さっきの杖とローブを買いなおしましょうか」


俺「バカって言ったか?」





俺「イケるじゃん、イケるじゃん、全然イケるじゃーん」


女「ちゃんとした装備ならイケるに決まってます。ここ始まりの町ですよ」


俺「よっしゃ、経験値とやらも入って強くなったし、改めて戦士に転職してくるぜ」


女「無理でしょうね」





NPC「レベルが足りないので転職出来ません」


俺「え」


NPC「転職に必要なレベルは二十以上です」





女「だから無理だと」


俺「まあいい。二十にすりゃいいんだろ? さっきのような調子でサクっとやっちまおうぜ」


女「頑張って下さいね」


俺「あれ? 一緒に来てくれるんじゃないの?」


女「私はさっきの魔物の素材が欲しかっただけです。もう手に入りましたので」


俺「いや、でも俺非力だから回復してもらえないとすぐ死んじゃうし」


女「そこの道具屋に薬草があります」


俺「いやいや、アレは道具屋だから絶対売ってるって物であって、実際買うやつなんていないって」


女「あなたが買うのでしょう?」


俺「そんなつれないこと言わないで」


女「えーなんでー? それって私になんかメリットあるのー?」


俺「先ほどはすみませんでした。お願いします、一緒に来てください」

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