第15話 ジンー2

 俺は中級の身体強化を出来るようになったから、次は身体強化発動の時間を短くすればいいらしい、中級の卒業検定は虎獣人の教官の一撃を瞬時に身体強化で防げるように成れれば良いと言う事らしい、俺は先ほど他の受講生たちが話しているのを立ち聞きして理解した。


 早速俺は練習を始める、下腹に瞬時に力を込める感覚に近い感じで練習すると意外に簡単に出来るようになった、これが出来れば中級は卒業となる様だ、今日の検定でも受けて見ようかと思う。


 弁当を配布されて俺はなるべく人のいない所で弁当を広げた、この弁当を配布していたのは途中水を掛けてくれた受講生のコウとリエ、それにミホとヒトシと言う俺の同郷の奴らだった、弁当を渡されたときに挨拶されたのでその時に知った。


弁当は出来立ての暖かさでとても美味かった、午後の時間は俺は諜報に走る、どうやら全属性の魔法を覚えるには土魔法から覚えていくのがこの頃のトレンドらしい、なので俺はこの採石場の端にある場所に来ている、50mx50mの訓練場が2面そこにはあった、そこには土魔法の担当教官のゴロウと言う教官が説明をしてくれていた、


「おめえ、名前は?」


「ジン」


「土魔法おぼえたいのけ?」


「そうだ」


「んじゃ おらんとこで暫く練習するといいだよ」


 そう言うと要点を教えてくれた、最初は土人形を作って動かす、それから愛着の有るものをゴールレムの中に仕込む、それが出来る様になったらゴーレムに自分の魔力を乗せて動かす練習との事だ、俺は早速練習にとりかかる、


 俺は昔から物を作るのが好きだった、粘土細工の人形はお手の物だ、俺の好きな希望戦士ガソダムを作った、ついでに盾とサーベルも作って装着させた、そして作動させてみる、最初の段階では本当にカクカクとしたロボットの動きだ、次は腕時計を仕込んでみる 随分動けるようになってきたようだ、そして魔力をガソダムに注ぎ込む。


「ほ~ジンもうそこまで出来るようになったのけ?」


俺は頷いて合図する、


「じゃあちょっと対戦してみっか? 相手は探すだよ?」


「宜しく頼む」 そう答えて対戦者を待つ


「ジンこの子とやってみてくんねーか?」 ゴロウ教官が連れて来た少年がそこにいた。


「やあ、ジンさん宜しくお願いします 僕ハンスと申します」


年の頃なら15才前後の少年が挨拶をしていた、


「宜しく」 そう言ってゴーレムを作り直す、練習試合は1mクラスにしてやるらしい、


 ハンス少年はスコープOックを作ってきた、俺は少々焦りを覚えた、動きがとても速いからだ、しかもターンピックで急旋回したり、アームパンチを繰り出す、おまけに左腕に付けた盾からパイルバンカーが稼働された、俺はすれ違いざまアームパンチを打ち込まれ右腕の破損、通り過ぎたと思ったハンスのスコーOドッグがターンピックでその場で急旋回そして後ろから首の部分をパイルバンカーで狙い撃ち、首を飛ばされて試合終了、何も出来ずに終わってしまった。


「有難う御座いました」


「ありがとう」


終了して互いに礼をした、


「ジンさん今僕らの中でこのギミックが流行ってるんですよ、これが使えると本物の魔物でも十分倒せるから皆懸命に練習してるんです。」


 ハンスはそう言って色々ギミックの事を説明してくれた、そして早速俺もギミックを装着、使える様に練習を始めた、これはなかなか面白い ボディもガソダムをベースにして各ギミックを装着していく、足だけ少し大きめにしないとキャタピラを仕込めなかったので微妙にバランスが変になっていたがこの際それはスルーした、


 そして俺の専用機が出来上がった、右手にアームパンチ、左手に盾は持たせずパイルバンカーを仕込む、両足の踝にはターンピックを仕込んである、俺はそのギミックを確実に使える様に練習している間に今日の中級検定の時間となった、


虎獣人の教官が叫ぶ


「よし、今日の昇級試験を始める、臆さぬものはかかって来い!」


2人程手を挙げて前に出てきた、俺と一緒に初級を受けていた男女4人組の男2人だった、


「では説明する、瞬時に身体強化が出来るかどうかを見る試験である、俺が貴様の前に来たら身体強化しろ、俺が腹パンをする、最初から身体強化はしない様に、瞬時に身体強化が出来る事を見る為のテストだからな!」


「自分からお願いします!」 そう言ってきたのは金髪ショートで碧眼の奴だった、


虎獣人が動いたと思ったら何気なく近づいて腹にいいのを一発入れていった、


「バキッ」と音がして彼は吹き飛んだ、


山羊獣人の教官の女が金髪の奴を治療していた、


「はい肋骨2本折れたのと1本はひびでした、次回頑張ってねぇ」


もう骨折を治したらしい、


「次!お前か」 虎獣人はそう言ってもう一人の黒髪の男の前へ行く


やはり前に行くと同時に腹に向かってワンパン入れる、今度は黒髪の男が両手をクロスして防ごうとしていた、が


「バキッ ミシミシ」と変な音も聞こえた,


「はい左腕開放骨折と肋骨に2本のひびですねぇ」


これもあっという間に治っていった、治癒魔法を掛けられた腕はビデオの逆再生を見ている様だった。


「次、臆さぬものはかかって来い!」


俺が手を上げて虎獣人が前に来るのを待つ、タイミングは正面に来るほんの僅か前に身体強化をする事だ。


「ガキン」


「よし合格だ!」


「他にいないか?いなければ又明日、臆さぬ者はかかって来い、」


 俺は合格したので明日から上級クラスに入ることになるのだが、諸注意を虎獣人から受けて最後にギルドの受付で明日から上級に移行すると言う事を申請する様だ、俺は身体強化してギルドに戻る、受付には熊獣人の初老の男がいたので「本日中級卒業」と告げた、


「今日から中級に入ったジン君だったね、なかなか優秀だな、明日からも上級講習を頑張ってくれ」 と言っていたこの人がどうやらギルドマスターらしい、俺は宿に帰ってもやる事が無いので裏手の訓練場に行く、さっき作ったガソダムの練習をする事にした、


虎獣人の姐さんがここを仕切っているらしいので挨拶してから始めた、


一人でギミックを作って稼働させる、ターンピックの作動タイミングを何度も練習する、納得できる動きになったので虎獣人の姐さんに礼をして宿に戻る、時刻が既に9時半だった、夕飯も食っていない事を思い出しレストランへ入り注文する、


「今日のお勧めで」


俺はそう言うとカウンター席について店内の様子を窺う。


「今日のマレー教官のタイミング早くなかったか?」


「いやそりゃもう早かったよ、俺片腕は開放骨折と肋骨だよ昨日はもう少し遅かったとおもったんだけどな」


どうやら初級で一緒だった4人組がいる様だ


「明日こそ合格だな!」 金髪の男が言う


「おう!絶対合格だ!」 黒髪の男がそれに答える様に言う


「そうよジョニーなら大丈夫きっと明日は合格よ!」


「アシルもきっと大丈夫絶対いけるわよ」


二人の女が励ましていた


「でもこのギルドの学院はレベルが高いんだね」 ショートボブカットの女が言う


「そうよね、うちらの方じゃ身体強化が出来ればもう一人前と見られるけど、ここは身体強化が出来てからが始まりみたいだからね~」 茶髪のクセ毛の女が言う 


「うん、しかも身体強化をあんなに速いスピードでこなさなきゃだめだって言うんだから...」


「そうね、あたしたちも冒険者としてもう4年やってそこそこいい所に来てると思ったけどこの間の中級初日の卒業検定で認識が変わったわ」


「全員骨折してたからねぇ~」


「そうそう、あの時は驚いたわ~まさか本当に骨折させるなんて」


「そうだよな、俺たちの街のギルドじゃあ身体強化さえできればよかったからな」


「でも まあ、これで更に上を目指せるんだから良かったのかも知れないな」


「ああ、ジョニーの言う通りだ、あのままだったら何時か俺たちも...」


「アシル、もう その話はしないっていったじゃない」


「ごめん、カーラ」


「そうよ、あの話はしないって約束したじゃないの」


「そうだな 気分を変えて今日は飲むか」


 俺はちょっと気まずくなった4人の会話を聞くのを切り上げ、注文した飯をたいらげて宿に向かう、いつものように魔力を爪に火を灯して消費し今日の日課を終えて就寝。



 朝何時も通り腕時計のアラームにより目が覚める、今日から上級の講習だ、朝食を済ませ俺はギルドに向かう、


俺は上級の連中を探す、先ずは情報収集だ 昨日対戦したハンス少年がいた、目が合うと元気に挨拶してきた。


「おはようございますジンさん!」


「ああ」 俺は片手を軽く上げて挨拶を返す、


「今日も一日宜しくお願いします」


「宜しく頼む」


そう言って挨拶を終えて俺は待合室の喧騒に耳を傾ける、


「も~ちゃんおはよう!」


「グゲッ...おはよう」


「今日で一週間だけど彼はどう?身体強化できたのかなぁ~?」


「い、いや まだできてねぇ」≪やべえ、こいつらに見つかっちまった≫(心の声)


「そっか~まだできて無いんだぁ」


「ミホ随分気にしてたよねぁの人の事」


「そうそう気になっちゃってたのよね、何時になっても身体強化出来ないから」


「おはようございま~す」


「やあ、ディップ君おはよう~あれから1週間だけどまだ身体強化できてないんだって~?」


「そうなんですよ、ひょっとして俺の身体強化 お手伝い頂けるんですか?」


≪ディップ何てこと言ってんだよ~、≫(心の声)


「じゃあミホさんが今日は練習に付き合ってくれるみたいだからがんばってね~」


「リエさんコウ君あとヒトシがサポートで入ってくれるから 安心してくださいね」


「4人もサポートしてくれるんですか、安心です有難う御座います」


俺は気になったので今日はこの4人を見学してみようと思う彼らが出発したらちょっと離れて見学する事にした。



そこには鬼に囲まれた亡者が責め苦に有っている状況が有った、


ディップと呼ばれた男のズボンの尻の部分が擦り切れて無くなっていた、ミホが細い竹の棒で尻を叩いているからだ、打ち込む時の音がダブって聞こえるよく見ると一回打ち込んだと思った時には3回叩き込んでいるんだ、そのたびに竹の棒が破砕されて尻から血が出て来る、それをコウがヒールで治しヒトシが新しい竹棒をミホに渡している、その後ろからモヒカンが涙ながらに追走している、


「すまねえ、力のない俺のせいだ 俺ももう少し心を鬼に出来たらこんな事には...本当の鬼に囲まれちまうことに」


「ディ~ップもう動けなくなったのか~?まだ反吐も吐いてないじゃないか」リエが言う


「あう、もうダメです...本当に動けないです...」


「なぁ~に~聞こえないな~」


「もううごけません」そう言って倒れたままの状態でディップは言う


「コウさんディップに水をかけてもらえます?」


「はいよ」 そう言って水魔法を大量にかける


「うわっ つめて~」


「ほ~らまだこんなに元気じゃないのキリキリ走らんかい!」そう言いながら竹の棒を振るう。


よたよたとディップが動き出す、暫くすると朝食ったものを全て吐き出し又倒れ込んだ


「よ~しディップここからがスタート地点だ早く立て!そして胸を張って足を一歩踏み出せ」


ディップがよたよたと起き上がり胸を張り一歩踏み出していく、徐々に動きが良くなっていく、現在のスピードは車並みになって来ていた。


「ディップ!出来たじゃないか!」モヒカン男が叫ぶ。


「いや~良かったこれで身体強化が出来たからあとは素早く強化出来る練習をすればいいよ」ミホが言う。


「よかったよ~本当にすぐに出来て、もし出来なかったらあの竹棒で叩かれながら何時間も追い回される所だったんだよ」ヒトシが言う



俺はこの場を身体強化して駆け抜けてスルーだ、そして採石場の場所まで全力で移動した、採石場のエリアに来ると受講生たちがそれぞれ自分の得意な魔法に磨きをかけていた、俺はある一団を見つけたので、彼らの会話を窺う事にした。


「リーダーじゃあ今日は火魔法からやりますか?」


「そうだな、基本をしっかりお浚いして行こうか」


俺は6人組のチームが魔法の練習をするのを見る事にする。


「じゃあ先ずはリーダーが見本を見せてくれるからよく見ておくように」


「じゃあ俺が始めるから皆も付いてきてくれ、先ずは炎をしっかりとイメージする所からだ、俺はろうそくの炎をイメージするから全員ろうそくの炎をイメージしてくれ」


リーダーと呼ばれる男が指先から炎を灯しそれをチーム員の作る炎と比べながら点検していく。


「よーし全員ろうそくの炎はできるな、じゃあ次はたき火の炎だ、」


そう言ったリーダーの指先にはたき火位の炎が上がっていた


「よーし皆たき火の炎は出来るな、次はちょっと難しいぞ、鍛冶屋の炉の炎だ」


赤々とした勢いの有る炎がリーダーの手から現れる、チーム員達も何とか炎を出すが安定しない様だ。


「コドワさん俺炎が安定しないんですがどうしたらいいですか?」


犬獣人の青年がリーダーに向かって質問していた、


「一回炎を出すのをやめてからもう一度鍛冶屋の炉の炎を思い浮かべてやってみるといいよ、もしもそれでも安定しなかったら鍛冶屋に行って1時間位炎を見せてもらえば安定すると思うよ」


「有難う御座います、解らなくなったら初心に帰るってことですね、」


「うん、そうだよ 下手な小細工するより基本に忠実にやって行く事、これが安全で確実な事だからね」


「はい、基本に忠実にがこのチームの考えですよね、」


 俺はこのチームから大切な事を学ぶ事が出来たようだ、迷いが出たら基本に戻り最初からやり直す、一見無駄に思える これは時間はかかるが確実で間違いのない良い方法だ、俺はこの場を離れ土魔法の練習エリアに向かった、




「コドワさん、彼に届きましたかね?」


「さっきの青年ならきっと大丈夫だよ、ちゃんと俺たちの話を聞いてから立ち去って行ったでしょ、」


「そうですね、最初コドワさんが基本からお浚いするから誰か見学者がいるのかと思ったんですけどちょっと離れた所に気配が有ったので理解できました、」


「すまないね、みんなの大切な時間を使わせてしまって、」


「いえいえ、自分らも同じようにして上級に上がってきたから彼の気持ち、良く判りますよ」


「そ、そうだよね、お、俺も人と話すのが苦手だったから、 よ、良く判るよ」


そこには異形の獣人がいた、左腕はびっしりと剛毛に覆われ右手は普通の人間の手だ、顔の右半分がイボイノシシの顔をした男が言う、


「そうだよな、アサロお前は見た目でかなり誤解を受けやすいからな、でも魔力操作が上手くできる様になればそれも無くなるはずだから頑張ろうぜ」


「あ、ありがとうございますコドワさん、こ、この御恩は か、必ず」


「いや、俺に対して恩義を感じることは無いんだ、俺は俺の目指す所の為にやってるだけの事だからな、」


「め、めざす目標ですか?」


「ああ、俺に身体強化を教えてくれた冒険者の先輩なんだ、あの人の隣でいっしょに冒険がしたい、その為に俺は人間性に磨きをかけないといけないんだ、じゃなければあの人の隣に立てない」


「そ、そうですか...」


「ああ、これだけは言っておく、決して勘違いしないでくれ、俺はみんなの事を人間性を上げる為の物として見ている訳じゃないんだ、大切な仲間として見てるからそこだけは覚えておいて欲しいんだ」


「は、はい」 何かを堅く決意した表情でアサロは答えた。



 俺は一人ずっと炎の火力を上げる練習をしている、たまに炎が揺らぐ、しかしそんな時は最初からやり直す、確実に火力の調整が上がって行っている今の火力はオレンジ色の炎を指の先から出している、太さは人差し指の太さの炎が1.5mほどの長さで出せるようになった、


 俺は更に火力を上げると炎は青くなっていった、これは俺の学習してきた知識を元に炎を作り上げている様だ、確か青い炎は1500℃くらい出たと記憶している、では更に高い温度は、俺はその状態を思いながら炎を作り出す、白く輝きとんでもない熱量が辺りを覆う、俺は即座に停止させた、これは危険だから封印だな、と思いつつ青い炎の練習をする。


街道をリヤカーを引いた山羊獣人が走って来る落伍した受講生を2~3人乗せているようだ、


「はいジン君のお弁当ですよぉ~」そう言って何時もの昼食を渡された、給食は山羊獣人から貰った弁当を広げその場で完食、食い終わったら弁当容器をリヤカーの上に集めている様なので俺もそれに習って置いて来る。




 午後からの練習は水系統の魔術の練習をしているグループが有ったので少し離れて見学してみる事にした。


そこにはギルドでよく見かけるカッパっぽい二人が獣人の子供達を5人引き連れて水系統の魔法の練習をしていた


「「大気中にある水を集めるイメージで手の平に水を出してみましょう」」


「「「「「は~い」」」」」


このカッパの人喋る声がシンクロしてるんだ、


聞いたことがある、双子って何気に同期して行動してしまうって事を、俺はそんな事を思い出しながら自分でも大気中にある水を手に集めるイメージを強化している。


「「皆さん手の平に水が出ましたか?」」

カッパっぽい人が問いかけると


「「「「「は~い」」」」

と元気よく返答が返って来た


「「では次にその水を飛ばしてみましょう」」


「え~どうやって水をとばすんですか~?」


「「水鉄砲はわかるかな?」」


「はい、前に作って遊んだあれですよね」


「「はい、水鉄砲をイメージしてその中に集めた水を入れてください」」


「「「「は~い」」」」」


ほう、なるほど水鉄砲か、俺も早速それに習いイメージして作り上げていく。


「「皆さん出来ましたか?」」


「「では試し撃ちでその木を撃ってみてください」」


すると近くにあった木に次々と命中していった、


「「はい皆さんよく出来ました」」


「「ではこれから水の出る勢いを上げていきますのでよく見てくださいね」」


「では私フェルディナンドが見本をお見せします」そう言いながらカッパの人は的の木に右手を翳した、と同時に木が切断されていく


「「このように水でも木を切る事が出来るので遊び半分で他人にこれを向けないようにして下さい」」


「「「「はい」」」」

元気よく返答が戻ってきた。


確かに他人にこれが向けられた場合命の危険を感じる、ちゃんとその辺を教えているからこれなら親御さんも安心して任せることが出来るのだろう。


俺も早速水を飛ばしてみる、離れた場所に飛ばすと圧力が落ちてしまい、切ることが出来ない。


カッパっぽい人がこちらをチラッと見てから説明を始めた。


「皆さんこの技には射程距離と言う物がありますのでそれを説明しましょう、」そう言って漏斗(じょうご)を作って見せる、


「遠くにあるものを切る場合ですが、答えはこちらが近くに行けば良いのです、」そう言いながら漏斗を飛ばし、その先端から水を噴射して圧力が遠くの的に届くようにすればいい、と言う事らしい。


「このように遠くの的を切る時は発射する場所を移動すれば遠くまで届かせる事ができるようになるのですが、これは漏斗を作る所から始めてくださいね、」再びカッパの人はこちらをチラッと見て説明を終える。


ここの受講生たちは惜しげもなく魔法を伝えてくれるようだ、そんなここのギルドの方針に感謝しつつ俺は又人気のない場所で漏斗(ファンネル)を作る練習をする、


俺は先ほどから漏斗を作っては飛ばそうと努力している、土を集めて固めて小さな漏斗を作っているんだ、作ったけれど飛ばないんだ、こんな時はどこかで見本を見に行こう、


俺は再度カッパの人達の近くに、すると頭の中に声が響く


《どうしました?何か分からない事でも有りましたか?⦆


こ、これは念話と言う奴か?と思っていると


⦅はい、その通り念話で語りかけています⦆


⦅こんな感じで俺の声届くんですか?⦆


⦅はい、十分届いていりますよ⦆


⦅教えて欲しい事が有るんですがよろしいですか?⦆


⦅はい、それはファンネルの飛ばし方ですか?⦆


⦅そうなんです、教えてもらえますか?⦆


頭の中に直接ダウンロードされたような感じで知識が入って来た。


⦅これで判りますでしょうか?判らない場合はもう一度ここに来てください⦆


⦅ありがとう⦆俺は念話で礼を言ってその場を立ち去る、


 これは言葉で説明されるより非常に解りやすかった、念話でカッパの人から伝えられた事を実践してみる、言葉じゃないカッパの人が体験した記憶がダウンロードされているんだ、それに沿って記憶を辿る、以前から知っていたような感覚で簡単にファンネルを展開してウオーターカッターを放つことが出来た、カッパの人には大きな借りが出来たようだ、



続く

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