第2話 ロッカーを抜けるとそこは、

 俺はロッカーの扉を開けた。


そこには向こうの世界と同じ様なロッカーが大量に並んだ部屋だった。


「はい、こんにちは、初めまして、テンシンの街のギルドへようこそ、」


そこには15才位の熊の耳をつけた青いチャイナ服のコスプレ少女がいた、


「先ずは冒険者登録からですね、それとギルドカードは銀行カードと共用出来ますから、あと魔法は...初心者さんですね、ならばこの街の魔法学院に入る事をお勧めしますよ~」


と、矢継ぎ早に説明されていく、っでそんな流れで魔法学院に入ることになった、入学金及び授業料は合計で金貨3枚との事だった、ってか俺この世界の金って持ってない無一文って奴だ、んで金貨1枚って日本円でいくらなんだよ、と思っていたら、


「あ~現金が無ければクレジットカード払いでも大丈夫ですよ、一括とリボ払いが選べるんですよね、どちらにします?」


え?なにここって異世界のクレジットカード使えるの?


「ああ、このギルドだけ向こうの世界のカードが使えるんですよ、」


「え?何故???」


「向こうの居酒屋冒険者ギルドで清算してるからなんですよね」


「ああ~そうか、ならばあと5万分課金して35万をリボ払いでお願いします」


 そう言って受付嬢が俺のクレジットカードをプリンタに乗せてスライドさせる、今ではあまり見なくなったカーボン紙を使ったプリンタで印字した、そして俺のサインを入れる、ちなみに金貨は1枚10万円で30万が教習料金だった、車の免許取るのと同じくらいかな~?と思いながら5万分をこっちの銀貨にしてもらい都合35万円リボ払いにした。


 金貨1枚で10万円、銀貨1枚で1万円、銅貨1枚で千円って感じみたいだねここは、っで単位はギルダンと呼ばれる、なんでも全国のギルドで共通で使える通貨だそうだ、当然国によっての通貨も有るけどローカル通貨はあまり旅人に人気が無いらしい。



受付嬢さんが、


「教官新しい生徒さんです宜しくお願いしますね」


と、建物の奥の控室に声をかける、


なんだかリアルな感じのタイガーマスクが出てきた、見た目に虎獣人って事がすぐに解る位見事な虎だった、


「俺はこの街の魔法学院の教官でマレーと言う、生き残れるように頑張るんだぞ、」


続いて出てきたのは狼男だった


「俺はカイってんだ宜しくな、」


何処かで聞いたような挨拶だった、すると顔が人間の顔に変化して行くんだよ、ナニこれこわい、


「ああ俺たちは獣人だからな、魔力の調整で姿を変えられるんだ、丁度さっきまで夕飯食ってたからな、食いやすいスタイルで食ってたんだ」


「そうでしたか、ちょっと驚きました、」


「ん?これで驚いたって事は向こうから来たのかい?」 狼男だった人が言う


「はい、今日始めてきました、」


「そうかい、じゃあこの世界たっぷり楽しんでくれよな」


 講習は明日の朝からと言う事なので俺は今日の宿探さないとと思っていたら、ギルドお勧めの宿ってのを紹介されたんだ、ギルドの建物から大して離れていない所に有った。



宿に入ると受付には熊獣人の姉さんがいた、身長180は超えてる感じの美人の熊さんだった、更に奥の方から


「はい、いらっしゃい、ようこそモーリヤ亭へ、」


そう言ってパイプ煙草をふかしながら出てきたのは身長2.3mくらいあるダンディな初老の熊獣人さんだった、


「一泊朝食付きで3000ギルダンだよ何泊していきますかな?」


「えっと、じゃあ7泊で」俺は21000ギルダンを支払い2階へ案内された、


「201号室ここが今日から7日間貴方の部屋になります、朝食は朝5時から出来ますが、9時で朝食サービスは終わってしまうので寝過ごさない方がよろしいかと思いますよ、」


ダンディな熊さんから鍵を渡され俺は部屋に入る、


 部屋にはとても大きなベッドが一つと机に椅子、トイレとシャワーが一体になったユニットバスルームが併設されていた、このバスルームって普通によく見る元の世界のタイプの物を大きくしたような感じだった、


っで俺はスマホを取り出し時を見る、22時43分、とりあえずシャワーを浴びてから寝る事にした。


 タイマーなんかなくても7時30分には目が覚める、習慣って奴だね、俺は顔を洗ってから1階に行く、ここはレストランもやっている宿屋なんだ、朝から大勢のお客でごった返してる、ここの一階はレストラン・セキと言うらしい、ここの宿のオーナーの倅さんがやっているそうなんだが、美味いと評判の店だ。


 日本の一流ホテルと比べても何の遜色も無い、むしろ、この店の料理の方が美味いと思うくらいの仕上がりだよ、

ビュッフェスタイルで食べ放題なのである、が、どこぞの無法の民の様な食い切れないくらいとって来て残すなんて事は一切ない、民度が高いのか、食べ物を粗末にしないのかは判らないが、俺としてそれは見ていて好ましい姿であった。


 食事を終えた俺はギルドに向かう、カウンターには昨日の熊のコスプレ少女がいた。


「おはようございます、魔法の講習ですね」 


彼女がそう言うと後ろの控室から大きな熊の人も出てきた、モーリヤ亭のご主人によく似た熊の人だった、


「やあ、初めまして、昨夜はよく眠れましたかな?」


「はい、とてもよく眠れました、とても良い宿ですね」俺はそう答えると満足そうに、


「あの宿は私の兄の宿なんですよ、」そう言って微笑む、


「今日から魔法の講習でしたね、今教官が来ますからあちらの待合所で掛けて待っていてください」


そう言われて待合所を見ると幾人か座っていた、多分あの人たちも講習を受ける人達なんだろうなと思い俺は椅子に座る、


暫くすると昨夜の教官2人がやって来た、


「はい、中級クラスは俺の所へ集合!」 タイガーマスクが吠える、


「上級クラスはこっちだ~」 狼男が吠える


俺どうすればいいんだろう?と思っていたらまた熊さんだよ、熊の姉さんだよ今度は、


「あなたが初級コースの人ね、始めまして、ミミ・モーリヤです」 デカい、強そうな姉さん来ましたコレ


「宿の姉さんとすごくよく似てるんですけど姉妹なんですか?」


「ムム・モーリヤは妹ですよ、この街のギルドは家族経営みたいなものなんですよ、伯父がギルドマスターで受け付けでいた子があたしの姪のリン・モーリヤ、それと副ギルドマスターが叔母にあたるミンメイ・モーリヤ、あと私の母がこのギルドの魔法教習所の所長兼欠損部位再生医師をやってるのよ、」


「凄いですね、っでちょっと判らなかったことが一つ、欠損部位再生医師ってどんなことやるんですか?」


「ああ、文字通りの事ですよ、例えば足が魔物にがぶがぶされちゃって無くなった部分を再生させるんですよ」


「がぶがぶ食べられちゃっても再生出来るんですか?」


「はい、だから安心してがぶがぶされちゃってもいいですからね」


「いや、がぶがぶされたくないです」


「今日の夕方から一人欠損部位再生の人が施術予定で入って来るから良かったら見ておくといいかもしれませんね」


「はぁ...」


「では魔法講座初級は座学なので教室に行きましょう」




俺は教室に入る、20人くらいは入れる教室だった、そこには10才から15才位の少年少女が7名ほどいたんだ、


「は~い皆さん注目~今日から皆さんと一緒に学ぶコウさんです仲良くしてあげてね~」


「は~い」


うはっ、いきなり子供達とお勉強ですか、


「では、おさらいから行ってみましょうか、コウさん判らなかったら手を挙げて質問してくださいね、この子たちが説明しますから、」


「じゃあ今日はグスタフ君魔法の成り立ちから説明してみてください、ちゃんとコウさんに解るようにね、人様に説明して判ってもらえるって言う事はね、自分自身が本当に理解できていないと判ってもらえないのよね、とっても良い勉強になるから、頑張って説明してね、」


そう言ってミミ・モーリヤ先生は授業を行った。


「はい、魔導蟲の事からでいいんですか?」


「そこからでお願いしますね」


「え~っと 魔導蟲は大昔に人工的に作られた魔法を発動させる器官で母親の初乳の授乳によって受け継がれていくんですが、授乳されなかった又は元々親が魔導蟲を保有していない場合その子供は魔法が使えないので魔導蟲の移植をするのが一般的です」


「はい、ありがとう、ここで判らない人いますか?」ミミ教官が質問する。


「あ、質問です、」


「はいコウさん僕の説明で判らない事が有りましたか?」


「魔導蟲と言うのは心臓に寄生しているんですよね?害はないんですか?」


「はい、今までの研究成果で害は無いと言われています、余談ですが過度に成長途中の魔導蟲に負荷を掛けると神経節が切れてしまい、二度と魔法が使えなくなると言われています」


「そうですか、わかりました」


では今日の魔法の座学はここまで、午後は実地訓練していきますからギルドの訓練所へ移動してくださいね、そう言って解散した、昼食を食べ終わりギルドの訓練所に行くと各自爪の先から炎を出して自習していた、


「はい皆さん集合してください」


先生が生徒たちを集める。


「はい、それでは午後の授業を始めます皆さん準備してくださいね、」


全員胡坐をかいて座禅を組んでいく、俺もそれに倣って座禅を組む、


「では精神を統一してください、」


10分後、


「はい、それではろうそくの炎を思い浮かべてそれを爪の先から出る様にイメージして下さいね」


「魔法はイメージ、イメージさえしっかり出来上がればどんな魔法でも作れるんですよ」


俺は爪に火を灯した、いあ、特に貧乏な生活してた訳じゃないんだけどねw


「先生、何とか火が付きました」俺は火が出てる爪を先生に見せる、


「はい、これで全員火を出せますね、今回の生徒さんはなかなか優秀ですね、後は各自自習してくださいね、」


「ではコウさんこちらへ来てください、」


呼ばれたので先生の元へ、


「コウさんは20才超えてるとの事なのでこれを使って練習してください、寝るときも装着してくださいね」


金属の腕輪を渡された、でも金属にしては妙に軽く薄く作られていたけど変形はしなかった、それがミスリル合金って奴だった、


「このミスリル合金は特殊な加工をしてあるんですよ、これ無駄に魔力を消費するんですね、」


そんな説明を受けた、


「何のために魔力の無駄使いをするんですか?」 俺は問うてみた、


「魔力量を増やす為ですよ、、魔力は使うと減ります、でも減った分以上に回復しようとするんですね、その性質を利用して魔力の底上げをやるんですが、ある程度年齢がいくと伸び率が悪くなるんですよ、その為の補助用品と思ってください」


パワーリストの魔力版って感じですねコレ、着けたら何だか体がだるくなって来た、


「なんだか体がだるくなってきました、」


「それはちゃんと効いてる証拠ですよ」


「取り敢えず1週間それを付けておいてくださいね、あと宿にもどったらシャワールームで爪に火を灯す練習を欠かさない様にして下さいね」


「はい、わかりました、」


「では今日の授業はこれまで、解散!」


俺はギルドの待合室にいる、欠損部位再生術って奴の見学の為だ。


 俺は待合室で人物ウオッチしているんだ、この世界にはいろんな人がいるんだよ、熊耳の熊獣人、ウサギ、猫、犬、羊、あとカッパ?みたいな人がいたんだ、しかもしゃべるカッパだった、ここのギルドの人は普通に接していたからきっと一般的なカッパの人なんだろうなと思いながら人物ウオッチを続ける。


夕刻18時になった所でミミ教官がやって来た、


「コウさん奥の手術室まで来てください、」


「はい、」


手術室に入ると拘束台の上に人が拘束されていた、


「こんばんは、私がこの患者さんの主治医を務めますママ・モーリヤです」


初老の女医さんが主治医らしい、


拘束台の男が呻きながら「よろしくお願いします先生...」と言った、


見た目東洋人ってかこの人日本人でしょ、


「渡辺さん、今日は腕の欠損部位の再生術を行います、麻酔を使うと欠損部位に変形等が出てしまうので使う薬は麻痺薬になります、痛みは相当な物になります、が、必ず腕は元に戻りますのでご安心ください。」


そう説明しながら拘束台に渡辺さんの体はしっかりと拘束された。


「今日は向こうから来たばかりの人が見学したいとの事なのですが、よろしいでしょうか?」


「それは構わないですよ、あんた、この世界はすげえぜ、死なない限り生きていけるんだ、」


ん?何を当たり前の事言ってるんだよ、と思ったんだが、


「ああ、ちょいと表現がおかしかったな、この世界は生きてる限り希望を繋げることが出来るんだぜ」


そう言う事か、命さえあれば何度でも五体満足な体に戻って生きていけるって事か、


「但し痛みを伴うけどな、」


「渡辺さん麻痺薬ですこれを飲んでください」


「うおお、苦げ~」


「体動きますか?」


「動かへえ、炉れるが、舌がマララ無くなってきら...」


「では左腕肘から先の欠損部位を綺麗に切除してから、再生軟膏を塗布していきます、栄養補助食品の準備を、ミミお願い、」


ミミ先生は残っている右手の重量を測る、そして、その重量の1.5倍分の栄養補助食品を用意する、


「漏斗(じょうご)、超吸収性栄養補助食品及び軟膏の材料欠損部の冷却、全て揃いました」


ママ・モーリヤ先生が腕だけ獣化させた、そして軽く素振りをする、手術道具は日本刀の様な片刃の剣だった、数回素振りをする、ヒュンヒュンと軽快な音を立てて同じ軌跡を描く、かなりの腕前のようだ、


「行きます...ふんっ!」


綺麗に切れた、欠損した所を思い切り冷やして出血と痛みを少しでも抑えようとしたのが良かったのか、綺麗に切れていた、


切り飛ばした部分の細胞を薬草とスライムの核と共に混合する、これで再生軟膏の出来上がりだった。


氷で思い切り冷やした欠損部に先生が軟膏を塗っていく、たちまち欠損部位の断面に薄皮が覆われる、その部分が徐々に伸びていく。


「ミミ!栄養補助食品を」 ママ先生がそう言うとミミ先生は漏斗を持ってきて渡辺さんの口にそれを噛ませる、この漏斗の先端はマウスピースの様に思い切り噛んでもいいように作られているそれでいて食道に超吸収性の良い特殊素材配合の栄養補助食品の流動食が流れ込むようになっていた。


「準備出来ました、栄養補助食品を投入します」


 拘束台に固定された渡辺さんの漏斗にゆっくり流れ込んでいく流動食、これをやらないと腕が発育不全を起こし小さな手になってしまうとの事、丁度蟹のしおまねきって奴みたいにね。


余程の激痛なのか麻痺しているはずの体が何度も大きく震える。


再生作業から2時間程した時から胸のあたりに変化が有った、皮膚の内側で何かがうごめいているんだ、


「ミミ先生、あの皮膚の下で蠢くものって何ですか?」俺は問う


「はい、あれが、あれこそが魔法を作り出す魔法器官の元、魔導蟲です」


「本来出産の極度な刺激により魔導蟲が繁殖時期を迎えたと認識するんです、今の状態が出産と同じ条件が揃ったからそれに反応して乳腺に卵を産み付けるのですよ」


するともう一人16~17才位の看護師の人が入って来た、


「エリーさん、丁度魔導蟲が産卵を始めました、回収準備お願いします、」ママ・モーリヤ先生が言う。


「はい、ではこちらもこれより作業に入ります」


そう言ってエリーと呼ばれた少女は渡辺さんの胸部を消毒し、胸部を切開、乳腺から魔導蟲の卵を器具を使って吸いだし始めた、


「回収終了です、有難う御座いました、」


そう言って彼女は渡辺さんの切開した胸部に手をかざす、するとかざした手と胸部が青白く発光して行ったかと思ったら急激に切開部が癒着して傷が塞がった。


「ではこれから魔導蟲の移植作業をしてきます」


「「「はい御苦労さまでした、」」」全員でねぎらいの言葉を掛けた。



続く

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