第66話:集結!王下騎士団
「やった…?」
タタラはローゼンの元へ駆け寄り、ローゼンに問いかけるように問いかける。
「バカを言うな。魔神を消し飛ばすには私の力と場所の相性が悪すぎる。ほら、魔術王が面食らっている間に集わせろ。今の人数で魔神たち相手ではキツいはずだ」
ローゼンが何を言っているのか理解をしたタタラはローゼンの差し出す掌に自分の手を合わせる。
ローゼンの魔力がタタラへと流れ込み、目に見えるほどの青い魔力の奔流がタタラを包み込む。
「皆、少しだけ時間を稼いでくれ!」
タタラの号令にオーガン、マガツ、プロメタル、アステラーナは頷き。再度近づく魔神たちを必死の思いで食い止め始めた。
「おぬし一体何を…!まさか…!呼んだところで無駄であるが…そう簡単に呼び出されるほど甘くはないぞ!タタラァ!」
ソロモンは凝縮した火球をタタラへ投げ込むがその全てがローゼンによって作り出された空気のバリアによって無に帰す。
「共に戦い抜いた歴戦の猛者たちよ。時空間を超え今こそここに集え!…万象魔術
王下刻印の光は世界中へ、時空間を超えて戦士たちの元へと届く。
光に応じた者は召喚者であるタタラの元へと来たる。
ローゼンのバリアが切れた事を皮切りに魔術王や悪魔たちの攻撃で土煙が上がる。さらに倒壊する街並み。
しかし攻撃がタタラたちに届く事はない。
ローゼンは既に空中に飛び上がり、静観に徹している。
では誰が。
「老兵の二人まで呼ぶなんて…どれだけ緊急事態なのかしら。タタラくん」
「テテリ…さん…!?」
ローゼンの腕の中で目を覚ましたミレハが攻撃を防いだ防壁魔術の使い手を見て驚く。
「ええい、遠距離がダメならば…行け!フルフル!八つ裂きにせよ!」
異形の姿をする魔神フルフルがテテリの防壁を壊そうと全身を牙と化し迫るがソロモンの後ろの壁へと叩きつけられる。
「余計なお世話じゃったか?」
「いいえ、ありがとう。アナタ」
テテリの笑みに口端を吊り上げるそのドワーフの名を―――崩蹴のポリメロス
「ポリメロスさん!!」
ミレハはポリメロスの蹴り技に目を光らせる。その様子にローゼンも思わず微笑むが、今度はローゼンへと波状攻撃が迫る。
しかしその波状攻撃が直撃したと思いきや、その場にローゼンとミレハの姿はなかった。
「ほう。少しは学んだか。幻術師」
「あなたにあれだけ挑発されちゃぁね…。おかげで初心に返った気持ちよ」
「シスターまで!?」
「お待たせ…ミレハ。あなたと団長を守りに来たわ」
ルミリアは今にも泣いてしまいそうなミレハの顔を優しく撫でる。
「その巨人が一番手負いだ!やってしまえ!」
ソロモンの号令にオーガンへと魔神2体による集中攻撃が及ぶ。防ぐので手一杯のオーガンの元へ時空を超えてあの男がやってくる。
「肉体魔術
その男はすかさず二体の魔人を腕に絡めて地面へとたたきつける。
「待たせたな…
時空の旅に出ていたモンバットでさえもローゼンの魔力を以て召喚していた。
オーガン、プロメタル、アステラーナは魔神の攻撃を防ぎ続けていたために手負いだ。その姿を見たモンバットは拳を握り、ソロモンへ睨みを効かせる。
しかし大規模な召喚魔術の隙が出来たタタラの背後から恐れ知らずの悪魔が自慢を爪を立てて首を狙ってきた。
「影縛り…!
影が悪魔の首を断つ。タタラは彼女のほうを向き笑みを浮かべた。もはや来ないわけがないと信じていたため、タタラは隙と分かりながらも回復に努めていた。
「生きててよかった…メローナ」
「あなたをおいてどこかに行けるわけがありません。私の命はタタラ様のためにあります」
完璧な連携ぶりにソロモンは苛立ちと少しの焦燥を覚える。
「我が魔神たちが引けをとるだと…バカな。そんな話があってたまるか!」
「人を舐め過ぎましたね。魔術王」
迫る剣戟。ソロモンは間一髪でそれを防ぐもその力の前に後退を強いられる。
「貴様…ハインツエム…マルスまで…」
「団長の声が聞こえました。なれば私たちはそれに応じるのが責務。それに久々の再会なのですから情けない姿をさらすわけにはいきません」
魔神たちから解放されたマルスと囚われの身だったハインツエムがソロモンへ決意に満ちた目を向ける。
「だがしかし数が少し増えたところでお前たちヒトの力は魔神たちには遠く及ばない!この実力差をどう埋めるつもりだね」
タタラが元王下騎士団の前に出るとタタラの足元から純白の光の柱が上がる。
「君は僕の事を知っているようでそんなに知らない。…手を隠していたのはお互い様ってところさ」
「だから聖魔は意味がないと…なんだこの光の量は!」
ただの聖魔はソロモンに吸収されてしまう。されど、なぜタタラは各地を巡りその度に目立つ聖魔を連発していたのか。その真髄は今ここに集約されている。
「念には念を。君は僕の聖魔を気にし過ぎた。まさか君が裏切るとは思わなかったけれど…慎重な性格の僕の勝ちのようだね」
南はアルスレッド王国から、北は北の大地から、西はプロメタ聖騎士団国から、東はキリエル大司教国から。それぞれの場所の上空に聖魔の魔法陣が展開される。
「此処に
聖魔の光とは比べ物にならない膨大な白がセクバニア全土を包んでいく。魔神たちが使役する下級な悪魔たちは即座に消え去り、魔神たちさえも苦しみ始める。
「私の魔神たちが…弱っていく…そんな馬鹿な」
「バカはお前だ。本来魔神たちは現世に住まう事のない魔の存在。器なしで使役しようとしたのがそもそもの間違いだ。これだけの弱体を喰らえば…もうヒトでも五部で戦えるだろう」
ミレハを抱きかかえたローゼンが不敵な笑みを浮かべ、ソロモンの傲慢さを一蹴する。
「さぁ。行くぞ魔術王。これより貴様を断罪する」
目を見開くソロモンの前に立ちふさがるは世界にその名を轟かせた最強の猛者たち。
名を王下騎士団。この場にいる10名程度で他の大国と互角以上に立ち回ったとされる生ける伝説。
その力が今、冥界より呼び出されし魔神たちを討ち果たさん。
「おのれ…こんなはずでは…こんなはずではなかった」
地面に降り、両拳を握りしめるソロモン。その顔は歪み、タタラたちへ憎しみを露わにしている。
――――今の私に、もう人である必要がどこにある。
「そうだ…私はもう…後には引き返せませぬ」
聖魔が発動した以上、タタラの意志で魔神より下位存在である人間は問答無用で魔術を行使できなくなる。それはどれだけ魔術を極めたとされるソロモンにおいても同じ。
「ならば私が魔神以上の存在になるまでの事…!黒魔術…ディ・ラウンド・アンラ…セクバ・ユトラン・ガルグニモス」
ソロモンが地面に掌をつき、呪文を詠唱し始めると漆黒に輝く魔法陣が発生し、魔神たちがソロモンを取り囲むように魔法陣へと立ち始める。
「あやつ…。人間を辞める気か…気を付けろタタラ。もうやつに聖魔の力は効いてないと見たほうがいい」
「あの術が完成しきる前に止められないのかしら?」
モンバットがローゼンのほうを向いて問いかけるが、ローゼンは首を横に振る。
「黒魔術が一度発動してしまえば誰にも止められん。この場にいる私でさえもだ。加えて人間が黒魔術を使うとどうなるか、黒魔法ほどではないにしろ…人が制御できる代物ではない。やつは闇に呑まれる。優しさは完全に捨てきれ、容赦なく殺すしかない。でないと大切な仲間を失う事になるぞ」
ローゼンは淡々と語る。まるで未来を見るかのように。
「分かってる。彼はもう今までのソロモンじゃない。皆…全力で行こう。出し惜しみはなしだ!」
タタラの号令を皮切りに、それぞれ自慢の武器を取り出し、構える。
ローゼンはその様子をどことなく悲しい目で見ていた。
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