第3話 未来から美少女が現れた!
俺の小学生時代の黒歴史を知っている、しかし同時に死後の世界にも存在している。果たしてコイツは
「お前は本当に優子なのか?
だが何故ここにいる?
そもそもここはどこなんだ?
死後の世界?
俺はこれからどうなる?
地獄でエンマ大王に火あぶりにされる?
それとも奇跡が起きて
俺の真剣な問いかけに、優子は素っ頓狂なトーンで返事をした。
「ハ・ズ・レ! そのどちらでもないよ~ん☆」
「どゆこと?」
「時空的可能性から見れば、ヒロくんはまだ死んではいないの。
私がヒロくんが身を投げる寸前の時間のまま停止させているから」
優子の言っている事の意味が分からない。
「時空的、何だって??」
俺は半分アホ面をして聞き返す。
すると、優子の姿をしていた女性は、まるでCGの
「私のコードネームはミハル。優子さんの姿と記憶は、この時代のご本人から直接承諾を頂いてお借りしたの。井原さんに心を開いてもらう為にネ♡」
「君は……、一体何者なんだ?」
その美少女はドヤ顔をしながら襟元に隠してあった金色に輝くバッジとIDカードを取り出して俺に見せびらかしつつ、
「見て、これが私の公的身分証明書。
私は時空を超越して個人の生命を守る権限を持つ『超次元救急隊、
【ハイダーズ】(HYper Dimension Aid and Rescue agentS)』の
ますますワケが分からず、俺がキョトンとしていると、美少女は続ける。
「要するに、未来の井原さんの奥様が過去で井原さんの身投げを防ぐ為に雇ったタイムトラベラーのガードマン、それがこの私ってワケ♡」
んんん? 未来の
俺はSFとかには興味がないので皆目見当もつかない話だ。
「未来から来たと言ったが、何年先からなんだ?」
「今から約30年後。
なんと、亜希子は30年間も死んだ俺の事を思い続けてくれていたと言うのか!?
ああ、亜希子、ありがとう。
今すぐにでも会って、「愛している」と言ってやりたい。
「それで、俺はまだ時空的なんちゃらで死んでいないと言う話だが? 自分の死体を見せつけられている俺は一体どこにいるんだ?」
「貴方は今、時間の止まった世界で貴方が起こしたもう一つの世界を見ているのよ。私達が幻覚を見せていると言った方が分かりやすいかしら?」
「じゃあ、俺は死なずに済むんだな? 無事に家族の所に帰れるのか?」
「そう簡単には行かないんだな~」
するとミハルはどこからかまた分厚いブックレットを取り出して来て俺に差し出し、真面目な口調に戻って俺にこう話す。
「これが亜希子さんとの契約書。と言ってもこのクソ厚い電話帳は見せるだけ無駄な様ね。でも井原さんは、これから自分が起こす惨劇を最後まで目を反らさずに見なきゃならない。これもこの契約書に書かれた貴方の義務なのよ」
俺は再びミハルに遺体の安置室に誘導されて来た。
部屋の外には高校生の長女の
「ママ! どうしてパパに会わせてくれないんだ!?」
「そうよ! パパがそんな事したなんて信じられない! この目で見るまでは!!」
「スーちゃん、カースケ。気持ちは分かるけど今は駄目。お葬式でちゃんと会えるって約束するから」
「そんなの嘘だ! 死んだのはパパじゃ無いよっ!」
甲子雄は無理やりドアを開け、ビニールシートが被ったベッドに駆け寄る。
ああ、頼むから止めてくれ。カースケ!!
「ウゥッ!」
ビニールシートをめくってしまったカースケだったが、俺がはめていた腕時計を見ると、
「これは! パパの誕生日にプレゼントしたタフショック限定1000個のハチロー記念モデル! そんな! なんとか言えよ、パパ!! 約束したろ!? 僕がメジャーリーガーになるまで野球を教えてくれるって!!」
「やめなさい! カースケ!!」
亜希子は、もはや喪心状態になった甲子雄を遺体安置所から引きずり出した。
駄目だ。見ていられない。俺はミハルに懇願する。
「頼むからもう止めてくれ、もう俺は耐えられない!!」
「まだまだ続くわよ。ご遺族達の生き地獄が」
「こんな光景を見せつけられる位なら、死んだ方がまだマシだ!」
「じゃあ、奥様との契約事項、第255条78章1028項のダッシュB計画変更を認めますか?」
「何だって良い! 認める!!」
するとミハルは、耳に付けていたBluetoothのヘッドセットを通じて誰かと連絡を取り始めた。
「ケース番号0823、契約事項第255条78章1028項の、本人によるダッシュB計画への志願意思を送信しました。確認を要請します。本部による正式受理了解。ダッシュB計画を実行します」
ここで俺は突然不安になった。
あのインチキ生命保険の時の様に、ちゃんと目を通してから返事するべきではなかったのかと。
「ミハルさん? そのナントカB計画についてなんですけど」
「井原さんの命を助ける条件として、これから井原さんにある人の命を救うミッションにチャレンジしてもらう。それがこの契約の特約事項『ダッシュB計画』よ」
「そんな大それた事が俺に出来るんですかね?」
「今の井原さんに出来る事は、自分を信じる事。それだけよ、良い?」
う~ん、そう言われると余計に自信が無くなる。
「自分の事なんてのは、正直自分でも良く分からん。だが、君があのデカパイ優子だったら信じられてたんだけどな」
俺は無理矢理契約させられた事への抗議の気持ちもあって、ぺたんこ胸のミハルにイヤミを言ってみた。
「ちょっと! そんなヤラシイ目的で優子さんにラブレターよこしたの!?」
「無かったと言えば嘘になるが……。ま、まあ、良いから良いから。早くそのダリビッシュ計画とやらと実行しようぜ」
呆れ顔のミハルは白目をむきながら舌を出し、
「ふんっだ! ダッシュ、ベーッ!計画ですっ!!」
と、ミハルは俺にアッカンベーをして見せた。
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