第15話

大樹との別れを再び経験した

やっと、

ちゃんと「さよなら」が言えた気がした



数日後

涼介が帰国した


「栞、ただいま」


空港に迎えに行った私を嬉しそうに抱きしめる夫

心の奥がズキッとした


「おかえり、涼介」

笑顔で答えた



家までの車の中


向こうでの生活のこと

お土産のこと

涼介は次から次へと話した


「涼介、疲れてるでしょ?」


「疲れてたんだけど、久しぶりに栞の顔見たら、テンション上がってきたのかなぁ」


優しく笑う涼介の横顔を見て、いつもなら、明日は誰かのところに行くのよねって思ってたのに…

同じ過ちを犯した私は夫を責めることなんて、出来なかった



1ヶ月ぶりの夫との夜

当然のように求められた


「涼介、ごめん、今日はダメな日なの」


「えー、そりゃあないよー」


「ごめんね。涼介も疲れてるんだし、もう寝よ」


「仕方ないなぁ」



まだ、消えない大樹の跡が見つからないように、そっと布団をかぶった

隣で静かに寝息をたて始めた涼介の顔を見てホッとした



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「もしもし、栞?涼介さん帰ってきたの?大丈夫だった?」


「うん…大丈夫よ」


「ねぇ、わかってる?絶対言わないでおくのよ。一生、言わないのよ。

涼介さんだって、浮気してたんだから、お互い様。

それに、栞はたった1ヶ月だけで、もう何もないんだから、このまま何もなかったことにするのよ」


「美夏、私、そんなことできるかなぁ」


「出来るとか、出来ないじゃないの!するの!わかった?

涼介さんの浮気だって、1ヶ月も出張行ってたんだし終わってることかもしれないよ。妻なんだからデーンと構えときな」


「…うん」



美夏にそう言われたものの、どこかよそよそしい私に

鈍感な涼介だって、きっと何か感じてるはず


このままずっと

なかったことにして

過ごせるんだろうか



伝えたくても、伝えちゃいけないたくさんの言葉


そんな言葉たちが私の心の中では居心地が悪く

今にも暴れだしそうで

怖かった

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