第13話

「なぁ、栞、明日、何処か出掛けようか?栞も家ばっかりで飽きただろ?」


「ほんとぉー!…でも…」


「少し遠出しよう…なら、気にすることないだろ?」



あてもなく、ひたすら車を走らせた

出来るだけ、遠く…


この道はいったい何処に続いているんだろう

まるで、二人の気持ちを走らせているよう



「結構、走ったなぁ」


「大樹、ここ何処だかわかってるの?」


「さぁー」


「大丈夫なのー?」


「大丈夫だろ」


「えー、帰れるの?」



「帰れなければ、いつまでも、ここにいればいいんじゃない?」


あっさりと冷たく言い放った彼の言葉に俯いてしまった。

慌てて運転席から顔を覗きこんで、優しく言う。



「冗談だよ、ちゃんと帰れるから、心配すんな、なっ」


頭をポンポンとして、すぐに前を向いて車を進めた




私達は知らない街を歩き、昔と変わらない笑顔で今日という日を楽しんだ


「もう、日が暮れてきたねぇ。帰らないと…。大樹、明日も仕事でしょ?」


「そうだな。

………あー、帰りなくねぇなぁー」


急に大きな声で駄々っ子みたいに言う大樹



私も帰りたく…ないよ


言葉の代わりに後ろから抱きしめた



彼はお腹に回した私の手をきつく握りしめた



「栞…ありがとうな」


「何よ、あらたまって」


「クスッ、だな。でもな、思った時に言っとかないと後から後悔するだろ」


「…バカ」


「はぁ?何でバカって言われなきゃ…」


握っていた手をほどいて、勢いよく振り返った


「やっぱりな、また…泣いてる」


「ごめん…」





栞の涙は拭っても拭っても、溢れてくる


この涙にどれだけの思いが詰まっているんだろう


大切な

すごく大切な宝物は

しまいこんでいても輝くことはない


壊れそうな繊細なガラス細工は

光を浴びて、一層、輝く




もう



いいよ












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