第12話

「おはよ」


大樹が私の髪を耳にかけながら上から微笑んでる


こんな朝は何度も迎えたことがあるのに、

今朝は何だか恥ずかしくて彼の胸に額をつけた


「んだよー照れてんの?変なやつ」


ぎゅーっと包み込むように抱きしめてくれる


彼の腕の中でこのまま、何もかも忘れて眠っていたいと思った


涙が一筋流れる

気付かれないように私の方からも抱きしめた



「栞…愛してる

俺の気持ちは過去に戻ってるかもしれないけど、今、ここにいる栞の温もりを離したくないと思う」


「大樹、いつから、そんなに素直に伝えてくれるようになったの?成長したね」


「お前、ちゃかすなよ。俺…こんなこと言わなかったか?」


「そうだねぇ、言わなかった…。きっと伝えようとはしてくれてたんだと思うんだけど、私も自分のことばっかりで余裕なかったんだと思うの」


「……ごめんな」



辛そうな表情で言った彼にかける言葉を探したけど、見つからず……

唇が動かず、喉の奥が詰まってしまう


そんな私の頬を両手で包み、彼がもう1度言った



「栞…愛してる」



涙が止まらなかった


「泣くなよ」


しゃくりあげる私にキスするから、息苦しくて


「っく、ふぇっ、く、るしいよー」


「栞が泣きすぎだから。俺はキスしたいの」


「ンンンっ」


胸、脇腹、二の腕、次々と赤い印をつけていく


「やっ、ダメ」



「栞が……俺のこと忘れないようにしてんだよ」




幸せな時間なのに


その言葉が

悲しく、冷たく

心に響いた

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