第7話

「もしもし、栞?」


「大樹、どう?体調は?」


「ありがとう。もう、すっかり元気だよ」


「良かった」



「栞……

俺…お前に会いたいんだけど」



こんなにはっきりと言う人だったか?と少し驚いた


「いいよ。退院祝いしようか」


そう、これは同情だよね

大樹は普通じゃないの

私が支えてあげないと。


「おー、いいなぁ。俺、久しぶりに栞のご飯食べたい

…あっ、ごめん、それは、まずいな」


「わかった。そうしよう。明日、大樹んとこ行くね」


「ほんと!じゃ、待ってるな」



外で会うより、人目につかなくていいと思った

そう理由付けた気持ちの奥底に

あなたのこと、好きで好きでどうしようもなかった

昔の自分を思い出してた。




大樹のマンションは私の住んでるところから、少し離れたところにあった。

いつものスーパーで食材を買い物し、電車を乗り継ぎ、駅からの道を歩いた

「駅まで迎えに行くよ」という彼の言葉を断った


どこか、はしゃいでる自分をあなたに会うまでに落ち着かせるため。


私は結婚してるの

何度も言い聞かせながら、薄暗い道を背筋を伸ばして歩く


彼のマンションが見えてくると前に大樹が立ってた

小走りで近づいた


「大樹、待っててくれなくても平気なのに」


「栞、方向音痴だから、ちゃんと来れるかなと思ってさ」


「ちゃんと来れたでしょ」


自慢げに上を向いた

そんな私の額にデコピンする彼


「いったぁ」


「調子にのんな」


ふっと笑うと買い物袋を持ってくれた


「行くぞ」


顔が緩んでくるのを戻そうと力を入れつつ、彼の後ろをついて行った


私達どこから見ても、幸せそうな2人だよね

そう、今だけ

昔に戻ってるだけのね








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