第3話

大樹との出会いは商社に勤めていた頃。

取締役秘書だった私は度々、関連企業のパーティに同行した


周りは親ほど年の離れた取締役ばかり

出会いなんて全くないと…思ってた



S会社の支店長さん、何度もお会いしたことのある方で


「平松さん、今日も可愛いねぇ」


「お上手ですね。もう、かなり進んでますかぁ?」


「まだ、そんなに飲んでないよー。

そうだ、今日は部下を連れてきたんだ。

紹介するよ、沢木くん」


「はじめまして、沢木 大樹です」


「はじめまして、平松 栞と申します」



ありふれた場所でのどこにでもある出会い


そのまま、心が通わない時の方が多いのに

男と女の巡り合わせって不思議

何故か引き合う力が生まれる瞬間ってあるもの


彼のどこか淋しげな涼しい目に惹きつけられた



出会いから半年後

私達は付き合うようになった


沢木さんから沢木くんになり

……大樹と呼ぶようになった


呼び方が変わり

触れあい

愛し合い

思い合い


相手に何かを求めてしまう



好きになればなるほど…苦しくて

離れそうになるとまた…辛くて


大樹との日々は幸せだったけど

いつもドキドキしてた


この時間、いつまで続くんだろうって


大樹はあまり言葉にして話してくれなかった



不安な気持ちが募り

結局、2年で私達は別れてしまった



大樹はあの時何を思っていたんだろう?

最後まで本心を聞けなかった



私が愛しすぎてた…と思ってたから。

私だけが…。

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