第2話

次の日

涼介を空港まで送っていった


「電話するからな、戸締まりきっちりしろよ」


「大丈夫よ。いくつだと思ってるの」


「そうだな」


「そうだな…も、ムカつくけど~」


「ハハハ、じゃ、行ってくる」


「いってらっしゃい」



出掛けていった夫の後ろ姿を見送って何だかホッとしてた


それぞれの地へ飛び立つ人達が行き交う場所


一様に前を向き、足早に歩く人々の中、フラリフラリとゆっくり歩く


空港を後にしようとした時

視線の端に見覚えのある人影


え?

まさか…ね


人波に紛れて懐かしく思った人の姿も見失ってしまった



駐車場へ向かう背後から突然呼び止められた


「栞?」


聞き覚えのある声に心臓がドキンと跳ねた


振り向くとさっき見かけた彼


私がかつて愛した人


「大樹?」


「やっぱりなぁ、さっきすれ違った時、そうかなぁ?と思って追っかけてきた。

久しぶりだなぁ、5年ぶりぐらいか?」


「そうだね。それぐらいになるかな。

元気だった?」


「あー、元気だよ」



ほんとは少し早くなった鼓動

悟られないように平静を装った


それから、

お互いの近況

夫を送って空港に来たこと


私達は駐車場で立ち話した


もう、昔の彼


年月が何もかも流してくれた


そう、思ってた




「じゃあ、私、そろそろ帰るね」


「あっ、ごめん、話し出すと止まんないな。

またな……はないか」


「そうね、またなっじゃないね。元気で」


「栞も…」



彼に背を向けて車に向かった

もう、会うこともないだろう


そう、思いながら、車のドアに手をかけた

何だかいつもより、重く感じた


運転席に乗って、エンジンをかけようとすると……

息を切らして走ってくる彼


慌てて車から降りて駆け寄った



「どうしたの?大樹」


「栞、久しぶりにあの頃の皆で会わないか?

せっかく、今日こうやって会えたんだし」



このまま、永遠に会えなくなると腹をくくってた彼が一瞬にして、近付いた

自分から言えなかったことを言ってくれた

……正直、嬉しかった



「うん、そうよね。わかった」




再び手をかけたドアの重みが少し軽く感じたのは

私の心が軽くなったから?かもしれない








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