この思いは桜のように
ユラカモマ
この思いは桜のように
桜という花はじわじわじらすように咲くくせに風や雨でいとも簡単に散ってしまう。
今日も今日とて桜は散っていく。まだ、つぼみも残っているというのに。彼女はまだ来ない。樹は足を組み替え月を見上げた。彼女との再会は去年この場所で。今度は俺のほうが早かった。桜の下の俺に向かって彼女は笑いかけた。
「お茶とお団子があるの。よかったらいっしょにいかが?」
昨年はさして話したわけではない。互いに名前も聞かなかったぐらいだ。それでも彼女は言った。
「ここに来れば、あなたに会える気がしたの。」
彼女は
樹は目を大きく開けて木の擦れる音のした山道に視線を移した。そこには彼女が立っていた。今年もとっておきの手土産と笑顔で。
「ここに来れば、あなたに会える気がしたの。」
月明りに照らされて彼女の手に物騒な鉛が光る。鈍い音を立てて撃鉄が上げられる。
「そうだな、俺も待ってたんだ。」
樹の手にも同じものが光る。まったく、この金属が指輪とかならロマンチックだったというのに。捨てきれない一抹の未練を殺意に塗り替えて
桜の木の下、二つの火花が光って残りの花を散らす。それでも、来年もまた俺は花見をしにこの場所を訪れるだろう。だってまた君が来てくれるかも知れないから。
この思いは桜のように ユラカモマ @yura8812
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