第45話 SIDE 馨結 / SIDE ???
ハラハラしながらも彼らの同行を見つめていれば、不穏な気配を感じ取り、そちらの方向へ術を展開する。
頭上からの容赦のない攻撃に、迎撃の体制を取れば、
自分が迎撃であるならば、いまは弱りかけている鈴彦姫の保護、という判断だろう。
坊っちゃんの隣に立つのは、自分か
そんな似合わない感覚を振り払おうと術に力を込めた時、するり、と首元に柔らかなよく知った感触が走る。
「じゃーん!!
「おや。行けそうですか? 初月」
「たぶん大丈夫っ! まきびに話しかけたら応えてくれた!」
「では、我が主殿は任せても?」
「うん! 任されるね!」
しゅば! と片手を勢いよくあげた初月の姿が消える。
気配が動いたのを感じながら、我々に攻撃してきた者の流れを辿れば、「
「貴方は……」
「
白澤の問いかけに、十二天将が一人、大裳がゆらりと宙から姿を表す。
「いまアチラに青龍と勾陳が向かったトコロですので、事態はすぐに収まるかと」
「なるほど。それは良かった」
大裳の言葉に、白澤は何をどう考えているか等はひとまず置いておいて、にこりと笑みを浮かべ答える。
その様子に、気がついているであろう大裳は、静かに苦笑いを浮かべる。
「……それにしても、アノ者は、安倍の子の血縁では?」
ツイと彼等がいるであろう方角を見やりながら問いかければ、「人で言うとても遠い血縁、というものですよ」と大裳も目を細めながら答える。
「ただ」
「はい?」
「血縁、というモノで括るのであれば、アレは貴方がたの主殿とも、遠い血縁でもあります故」
「……まぁ……でしょうねぇ」
「一欠片も要素は見つけられませんが、そうでしょうね」
「はは」
苛烈な赤色が天に伸びた、と思った瞬間、「相変わらず仕事が早いね」とのんびりした声とともに、安倍の子が歩み出てくる。
「……貴方、もしや」
彼の少し後ろで、
「護りたくて仕方がないのは、君たちだけでは無いんだよ」
ちらり、と坊っちゃんを振り返りながら笑う安倍の子に気づき、坊っちゃんは少し不満そうな表情を浮かべながら駆けてくる。
「あー! もう! 手も足も出なかった!」
「そりゃあ、僕はずっと前から修行をしているからね」
「そうだけど!! そうなんだけど!」
「けれど、
「やっぱり?! そうかなって思ったんだ!! 頑張った成果でてた?! あ、ねぇ聞いてた?!
どやっ、という表情を浮かべる坊っちゃんに、安倍の子は嬉しくて楽しくて仕方がないと言わんばかりの表情を浮かべる。
安倍の子が坊っちゃんとだけ結界に籠もったのは、自分にしか引き出せない坊っちゃんのキッカケがあると確信していたからだろう。
その上で、遠縁の者の、襲撃。
坊っちゃんを護りながらも、能力の引き上げを謀る。
なんと傲慢で、なんと
「当主という肩書は、伊達では無い、という事でしょうね」
「……まぁ、そうとも言えますね。けれど、無茶をするのはどうかと思いますけど」
「……馨結」
「なんです?」
「たぶんですが……そうでも無いのかと思いますよ?」
「はい?」
「彼もまた、我が主とともにいることで、力があがっている。そうではありませんか? 大裳」
額の赤色を少し光らせたまま、大裳に問いかけた滉に、大裳は「やはりお見通しでしたね」と静かに微笑む。
「我が主の力があがると同時に、我々にとってはとても懐かしい、けれど似て非なるモノの力も感じていましたから」
ケラケラと笑いながら、そんな事をいう滉をギロリと睨むものの、一切気にすることなく、滉は笑い続ける。
「良いじゃないですか」
「……何がです?」
「馨結、あなた、気づいていなかったようですけど、だいぶ肩に力が入っていましたから。ちょうど良かったのでは?」
「…………」
「それに、貴方もなんだかんだ云って、あの子どもを認めてはいるのでしょう? でなければ」
あの結界なんて、すぐに壊せるじゃないですか。
ふふふっ、と笑いながらそう続けた
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「クッ?!」
じゅっ、という嫌な音とともに、モノが焦げた匂いが辺りに広がる。
「くそっ、まだ駄目か!!!」
ガシャンッと壁へと投げつけられた華美な器が割れ、破片が周囲へと飛び散っていく。
「早くしなければ…………っ!!!」
あの方を、完全にあの頃のお姿にお戻しなければ!!
早くせねば、またあの天狗めに、邪魔をされてしまう!!
暗闇の中、男は呻くように呟く。
「間に合わせねば」
そのためには
「なんとも邪魔なものよ。あの若造どもがッ!!!」
現当主だとぬかすあの若造も、
あの得体の知れぬ賀茂の若造も
「頂点は、誰にも譲らぬ」
あの方を復活させ、隣には、自分が
「混沌を望まれたあの方へ、この国の民、全てを捧げるのだッ!!!」
―― ああ、早く
今すぐに引き摺り降ろさねば。
漆黒の闇が、じわりじわりと、世界を黒へと塗り替えていく。
―― 友よ。我が友よ。
目を覚ましておくれ
主は、こんな事、望んではいなかったであろう?
後生だから、
あの時、取れなかったその手を、
今こそ、取らせてくれまいか。
地の底を這うようなその叫び声にかき消され、
その声は、いまもまだ、彼に届かない。
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