第4話 グリーネシアとヤバい奴


「本当に綺麗な草原なんですね」

「地域によって景色は色々だけどな」


 結局僕は別世界に行くことにした。今は、この青年にテレポートしてもらって別世界の草原に立っている。かなり広大な草原だ。点々と大きな広葉樹がそびえ立っている事以外には、遮る物はあまり無い―――


 しかし今はこの世界について知っている事が何一つ無い。この人に聞ける事は沢山聞いておいた方が良いのかな?絶対に情報が多い方が良いに決まってるしね。


「いくつか聞きたい事があるんですけど良いですか?」

「限度はあるが良いぞ」


「この世界はなんて言う世界なんですか?」

「グリーネシアという巨大な世界だ。巨大な平たい大地一つで形成されているぞ」


 巨大な世界… 冒険のしがいが有りそうだな。


「このグリーネシアって危険ですか?」

「場所によるが、この辺りの危険度はお前の住んでいた辺りと同じ位だ… 安全だ。 ただ、モンスターは多いな。」


 ここが安全なら、ひとまず安心だ。


「アテネとチェレンは何処に?」

「彼女らも草原に転送しておいた。恐らくこの草原…そう遠くは無いだろう。」


 詳しい場所までは教えてくれないか…まあ、近くにいるのならすぐに会えるかな?


「貴方は誰ですか?  …あ、僕はルーザーです。特に何もしていませんが…」

「名はエクス… 訳あって偽名にしている。職は… そうだな、さっきの番人よりも上という事だけ伝えておこう。」


 さっきの番人… ディエルか。やっぱりこのエクスさんはディエルより偉い人なんだね。


「それではそろそろ戻らせて貰うぞ…」

「あ、もう一つだけ!」


 忙しそうなエクスを引き留める。


「僕は… この世界で何をして生きていけば良いんですか?」


 言い方が悪かったか… 変な雰囲気になってしばらく沈黙が続いた。慌てて言い直す。


「いや、エクスさんが僕をこの世界に来させようとしたのは何か理由があるんですよね?」

「ああ、そうだ」

「その目的を果たすのには何をすれば良いのか教えてください」

「…知らん。自分で見つけろ」


 な、何だよ自分で見つけろって… 人を別世界に誘っておいて、随分と適当だな… すると、エクスは鋭い目をこちらに向けた。


「不満そうだな。こいつをやるから文句は言うな。」


 エクスがそう言って手渡してきたものは…手頃なサイズのポーチ。何か入っているのかと、少し胸を膨らませて中に手を入れると… 何かが入っているのは確認できたが、少し違和感を覚えた。小さいポーチに入れたはずの手が、どこまでも入っていくような。まさかと思って中を覗いてみて、僕は驚愕した。ポーチの中の空間が、どこまでもどこまでも続いていたからだ。これは紛れもなく、空間操作によって作られた「四次元ポーチ」だ。空間操作なんて、神の類いしかできない筈… そんな物を持っているなんて、この人は何者なんだ…? 大体、こんな物貰っちゃって良いのか!?


「驚いたようだな。これは私の特殊能力、次元操作によって作った物だ。いくらでも物が入るから役立つ筈だ。それから、この中に入った物は時の流れを無視する。つまり、食べ物を入れても永遠に腐らない。これは、時間操作から来るものだ。中には役立つ物が沢山入っている。」


 いや、どれだけヤバい能力持ってんだよ!!次元とか時間とか、世の法則に干渉するから!どれだけ凄い人なんだ、エクス!!


「本当にありがとうございます…」


 まあ凄いサポートをしてもらったのも事実なため、お礼を言うとエクスはまた首を縦に振った。


「じゃあな」


 軽く挨拶をして、ワープホールを開いて中に消えていった――

 そうだ、中身は!?ポーチ自体が凄かったので、中身もそこそこ良いものが入っていると期待しつつ、僕は再び中を覗いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る