第3話 無能番人とヤバイ奴

 突如現れ番人を吹っ飛ばした青年は、大きな声でディエルに向かって話しかける。


「ディエル… お前は何をしている?何故罪の無い人間を殺そうとしているのだ…?」


 どうやら敵では無いようだ。僕を守ってくれているのだろう。でも、この人はどうやってここに入ったんだ?さっきディエルが普通ここには入れないとか言っていた気がするけど。すると、ディエルが眉間にシワを寄せて叫んだ。


「何を言うのです!ここに入った人間を処罰する決まりを作ったのは貴方でございますぞ!」


 そ、そうだったのか?ならどうしてこの人は僕を守ろうとしたんだろうか… そんな疑問は次の青年の一声で解消した。


「こいつは例外だ。我が引きずりこんだのだからな。」


 いや、何で…?さっきから展開が早いし意味不明すぎる!すると青年はこちらに体を向けた。


「なぜだ、という顔をしているな。念のため話しておいてやろう。…その前に、このお前を閉じ込めているバリアを破壊してやろう。」


 青年は軽く指を折る程度に拳を作り、手の甲の中指の付け根をバリアがある場所に打ち付けた。特に変化が有るようには見えなかったが、前に歩いても何にもぶつからなかった。壊れている、ということだね。ディエルを見てみると、目を丸くして驚いている。自分のバリアに、壊されない絶対的な自信があったのだろう。そういえば、さっきディエルが青年に敬語を使っていた。お偉いさんなのかな?


「ありがとうございます…」


 お礼を言うと、青年は首を縦に振った。すかさず、青年は少し顔を強張らせる。


「それで、言いたい事なんだが…」


 青年は、バリアを壊した衝撃で乱れたスカーフを整える。そして、「言いたい事」を僕に伝えた――


「しばらく、ある別世界で暮らして貰えないか?」


 別世界… アテネとも行きたいなんて話していたな。今、普通は別世界に行けないなら大きなチャンスだ。しかし、僕には元の世界もある… 変に別世界に行くより、元の世界で普通に生きていた方がリスクは少ない。ここはキッパリと断るべきだ!


「あの、ごめんなさい!」

「お前の友達のアテネとチェレンとかいう奴も行ったぞ」


 え!?アテネとチェレンも行ったの!?たしかにアテネは別世界に行きたいとか言ってたけれども…弟のチェレンまでついて行ったのか…


「チェレンという奴は色々考えていて中々承認しなかったが、姉の方はひとつ返事でOKしたぞ」

「そうなんですか…」

「ああ、そうだ」


 二人だけで行ったなんて大分心配だな… まあチェレンは冷静なんで良いけど、アテネはそれ以上に向こう見ずだからな。どうするか…

 正直元の世界がーとか言っておきながら、大して元いた世界はどうでも良いように感じる。学校も卒業したし、就職もしていない。家族もいないし(プロローグ参照だよ!!)、その他に交流がある人だってアテネとチェレンくらいだ… 家だってもう壊れそうなものだし…


 あれ?本当に別世界行っても良くない?

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