うて!
俺は今、命を懸けている。大袈裟かもしれないが、つまりはそういうことだ。
全く、死にそうだ。
誰か助けてくれ。
俺を殺そうとするそいつは、冷たい眼差しで俺を見つめる。逆に俺は、全てを燃やし尽くすかのような熱い目でそいつを見た。もちろんそんなことをした程度で、そいつが俺を許さないことは分かっている。何故なら俺の方も、そいつを許すつもりがないからだ。
お互いに、お互いを殺したい。
そう思っているから、俺はどうすることもできない。ただ、その時を待つだけだ。
うつ瞬間を。
うたれる、その瞬間を。
やつが、ゆっくりと構えた。俺の命を握っているそいつは、握ったその命を面白くもなさそうに弄ぶ。その動きはまるで、何度も繰り返してきたかのように淀みない。何度も人を殺してきたかのように、揺るぎない。そして何よりも、俺もその殺してきた人たちのひと欠片だと、その程度だと、そう言わんばかりの態度が、気にくわない。
気に入らない。
「うてるもんなら、うってみろよ」
そう挑発したのは誰か、言うまでもない。だけどその挑発は、どこまでも意味のないものだった。
何故なら、俺は。
もう、覚悟を決めていたから。
大した感傷に浸る暇もなく、その瞬間はやってきた。凄まじい音だった。それは俺を貫こうとしていたやつの心を。
へし折る、音だった。
全てが終わった後で、俺は誰に言われるでもなく空を見上げていた。多分それは自分の意思ではなく、気が付いたら、俺は、そうしていた。
この瞬間を待っていた。
うつ瞬間を。
うたれる瞬間を。
俺が、うつ瞬間を。
やつが、うたれる瞬間を。
みんなが待っていた。そんな、感動的な瞬間を。
「サヨナラホームラン!」
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