しかく

「何だ?この四角い部屋は・・・・・・ここは一体どこだ?」


 目を覚ますと俺は見知らぬ部屋にいた。そこは見た感じ、縦も横も高さも同じ真四角の部屋だった。言うなれば正方形。俺はいの一番にそこが気になった。


「どこかの研究室か?しかし記憶が曖昧だな。スマホもないし・・・昨日は何してたっけ」


 そもそも今日は何日だ?パソコンとか置いてあるから誘拐された訳ではなさそうだが。


 そこは大学の研究室のひとつのようだった。しかしどこの研究室かは分からない。どう思い返してもこんなところに来た覚えは全くなかった。


 部屋を出ようと扉に手をかけたのだが、ドアノブが回らなかった。何かで接着されているようで、誘拐はともかく、どうやら閉じ込められたのは間違いないらしい。


「参ったな、なんで俺がこんな目に・・・・・・お?なんだ?死角に何か・・・」


 その時、死角になっている部分に人がいた。眠っているそいつを起こして、俺は尋ねる。


「おいあんた、このゼミの生徒か?扉開かないからどうにかしてくれよ」と聞くとそいつは「さあ、分からない」と言った。どうやらこいつも俺と同じ状況のようだった。窓も開かず、扉の前で叫んでも誰も来ないので、俺たちはどうすることもできなかった。


「きみ、自動車科の生徒なんだよね」と、そいつが俺に言った。「そうだけど、なんで分かったんだ?俺のこと知ってるのか?」と聞くと「まあね」と答えた。続けて「きみは僕のこと知ってる?」と聞いてきたので「知るわけねぇだろ」と答えた。


「今日が12日だとすると昨日はアイコの家で飲んでたんだけどなぁ、その後一体何があったっていうんだか」と、俺が独り言を呟くと「きみの彼女、可愛い?」と聞いてきた。


「まあ顔はイケてる方。でも性格が悪くてよ。ほんと女って基本的に中身がクソだよなぁ」


 俺がそんな愚痴を吐くと、そいつは俺の前に立ってこう言った。


「お前に彼女の何が分かる・・・お前に、そんなことを言う資格はない・・・・・・!」


「あ?資格?何のことだ?・・・・・ってお前、それ、なんだ・・・・・」


 気付けばそいつは右手に刃物を持っていた。そしてそれを俺目掛けて振りかざした。


「お前、一体・・・・・なんで、俺を・・・・・」


「そうだね、あえて言うなら僕は・・・・・きみを殺しにきた、刺客だよ」


「刺客・・・・・・・?」と。俺は最後にそれだけを呟いて、その場に倒れて死んだ。


 後日、大学の研究室で学生が殺されたというニュースが報道された。


「これお前の通ってる大学じゃん。お前この殺された人知ってたりする?」


「まあね」


「マジで!?もしかして友達?どんな関係?」


 僕は笑って答えた。


「三角関係だよ」

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