第23話 土器土器!マンモス学園 ~史上最古のラブコメ2~
校舎裏に向かうまで、縄子と卑弥呼は、二人で並んで歩いている。
エム・フォーから渡された果たし状(?)に縄子は受けて立つ形だった。
「ところでどう?卑弥呼ちゃん、記憶の方は」
クラスメイトの卑弥呼、彼女は記憶喪失———その進行の真っ最中だ。
邪馬台国の、あるいはその外のどこかにいるらしい家族とも離れてしまったらしい。
波打ち際をいかだで漂っているところをクラスメイトの親が見つけたのだ。
どうも、海の向こうの陸地にもたどり着いて、そこの人たちとお話したことで、言語の癖が強くなってしまったらしい。
「頭に強い衝撃を受けたのだろうと、長老様はおっしゃっていましたンセス」
「そうなんだぁ、でも医学があと何千年か進まないと、解決しないね」
「何か自分の、重要な秘密を持っていた気がするプリ。でもそれが何なのか考えると、うっ……頭が……ってなるンセス」
彼女がかつて、漂っていた広い海。
ひたすら、水しか見えないけれど。
たまに陸地が出現して、その向こう側の人たちが、船に乗ってやってきたことがあるらしいです。
そんな伝説がありました。
いまでは、その中で、伝説ではないものもいくつかできています。
「話は変わるけど卑弥呼ちゃん、ちょっと見てほしいものが……」
言いかけた縄子が、貝殻を懐から出す。
そして、そこまでにとどめた。
これは、あの男から受け取ったものだった。
「なんなんセス? それは」
「いえ……やっぱりいいわ、これは私のケジメよ」
縄子は決意の瞳のまま、ぐんぐん歩く。
それを疑問で見つめつつ、着いていく卑弥呼。
☆☆☆
一方、邪馬台国立マンモス学園、高等部での資産額ベストフォーを誇る男たち。
畏れ多いそのオーラを纏うその二人が廊下を歩く。
周囲の生徒たちは、彼らとすれ違う時は目を伏せ、通り過ぎてから、その男たちを眺める。
恐れてはいるが、その眼には光が内包されている……
「いつも付きまとってくる下っ端は追っ払えたものの―――、本当に一人で来るのかよ、縄子……アイツは」
それに対応して応えるのは、軽薄かつ
「彼女の弟辺りはついてくるかもしれないけどねえ~、けど学年も違うし別々なんじゃないかい?」
「フン……つうかさ、ここで問題になってくるのは、あの女が読めるかっていうことだ……単純に、そこが心配だろうよ」
「ミスター
二人はそれの写しを手元に持っていた。
それは日本史上最古。
象形文字を用いて大貝殻の内側に刻んだ、
のちの世の考古学者にとっては、
口から喉から、唾液を滝のごとく流し出すだろう。
「じゃあ、ボクはそろそろ去るとするよ―――父上の仕事の補佐があってね。 告白が上手くいくことを祈っているよ、ミスター
「ああ、他のエムフォーにも、来るなって言ってあるし」
まもなく体育館裏に到着するところで別れる―――。
文章の監修を、加茂岩倉に頼んだのだった。
彼がそれを、まじめに読んだのかどうかは別として。
貝殻に視線を落とす、鋭い眼光の男。
刻まれた
『土器縄子へ。
今日の放課後、陽が大樹に触れた時刻、第一体育館裏で待つ。
そこで一対一で話をしよう。
俺の想いを伝える。
一人で来い。
いいか、絶対だぞ、こっちも人数集めてとかは絶対しねえから。
とても出来ねえから。
おまえの将来に関わる重大な発表だ。
逃げるなよ』
くっくっくっ―――。
にやにやと不気味に笑う男。
殺人鬼のごとく凶悪な笑い方をしているせいで、学園中から札付きの不良認定を受けているのである。
☆☆☆
「卑弥呼ちゃん、これから馬鹿野郎と一対一の殴り合いをするから、別れていい?」
「ええっ!? なん、なんなの急に言われても……っ、どういうことプリ!?」
「いや、果たし状をもらったのよ。喧嘩売られたら買うわよ、私」
体育館裏へ向かう縄子。
彼女は盛大に勘違いをしていたのだ。
「私の将来がどうとか———? 病院送りにしてやるぜみたいな意味だと受け取ったわッ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます