第7話 土器土器!マンモス学園 前半

 暖かな日差しが、森林に降り注いでいた。


 紀元前一万年。

 荒れ地に伸びている道は、人々や、この地域の野山を駆ける獣たちの踏み荒らしによって生み出されたものだ。

 すぐ脇には、熱帯と思われる背の高い雑草が天に向かって伸び放題である。

 ジャングルを思わせる―――しかし熱帯地域ではない。



 ドスン―――、ドスン―――。

 この村、地鳴りはもはや日常茶飯事である。

 なので、木々の根元を跳ねるように飛んでいる鳥たちに、逃げるそぶりはない。


 その周辺は、大樹がぽつり、ぽつりと見えている。

 地鳴りは、徐々にボリュームアップ。

 


 空には翼竜がお天道様を中心にぐるぐると旋回している。

 ギャ、ギャアア―――。

 翼竜が、翼をピンと伸ばし、村唯一の大型建築物を飛びぬけていく。

 峡谷かと思いきや、校舎であった。

 

 のちの記録には残ることのない―――。

 そびえ立つは人類史上最古の学び舎。

 邪馬台国立やまたいこくりつ、マンモス学園である。

 完全なる木造建築物は螺子ネジの一本も使わずにくみ上げられている職人仕様。

 木製でありながら強靭無比。

 

 機嫌が悪かったらしいステゴサウルスのショルダー・タックルにも耐えたという頼りがいマックスな校舎である。

 学校の敷地全てを含めれば、その広さは東京ドーム五十個分に相当する。




「なあ姉ちゃん……今言ったトウキョウドオムっていうのは、なに?」


 目の前にいる文次モンジ縄子ジョウコに問いかける。


「知らなぁい」


 日に焼けた幼顔の少年を、縄子は見もせず返した。

 児童でありながら、二重瞼がくっきりとしている。

 彼はニホンオオカミの毛皮を腰に巻いた姿。

 この地区ではありふれた出で立ちである。



 ズシン、ズシン。

 この邪馬台国は、地面が揺れる日が多い。

 地震のせいではない―――。

 巨大な影が、二人を覆った。


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