第4話 年代は違うはず


 マンガの話になると、いま流行っているらしい様々な事象に触れることが出来た。


「ああ、だったら『サイコな黄根氏キネシ』も知っていると?」


「読んだ、読んだ……」


「いいですよね、クセが強いですけれど」


 これは少し、いやかなりレトロなマンガだ。

 草をぶちぶちとむしり、私の若いころ好きだった作品をいくつも声に出す。

 

 単に二人で並び草むしりをする物語へとシフトしている今日この頃。

 草むしり中、マンガの話をするのは日課となりつつあった。

 もちろん高校の教師らしく、生徒間の話題についていけるようになろうという義務感のようなものも持っていた。

 そして、今流行っているらしいマンガを覚えようともした。

 

 若者マンガ。

 ……この、自分の年齢をかえりみない行為、オススメはできない。

 上手く生徒と会話を弾ませる先生も、周囲にはいる……いるにはいるのだが、明確にコケる者もいた。


 ……私?

 私はまあ―――真ん中くらいだ。

 大失敗はない。


 昔は、計算でやっていた。

 こういったことを―――小賢しく、おそらく小賢しく。

 生徒との距離を縮めるためならば、何でもやろうという気概があった。

 ……いや、逆だろうか。

 怖かったのだろう、生徒と離れることが。

 若いねぇ。


「面白いですよね……結構まえ漫画やつだけど」


「そうなんだよ」


 彼の知識量には恐れいる。

 年代は違うはずだが……。

 違うどころではない。

 

 このあいだ五七歳の誕生日を迎えたの私と、話が合うという時点で相当なものだ。

 どう見積もっても彼が生まれる前のマンガについて、細かいシーンの解説が出来ていた。

 私としてはあの絵柄が一番好きで、最近の子の―――なにやら細い線のマンガを見るとしっくりこないのだが。


「ああ、あの―――スプリングス城のシーンですけれど、作者があれ、虫歯でぇ、すごくつらいのに描いていたらしいっすよ」


「ええっそうなのか?」


「これはネットでの噂ですけれど、いやぁ俺、これは事実マジだと思いますね。やっぱあの何話か、二、三話だけめっちゃ変ですもん描き方」

 

 そんな裏話、小ネタというだろうか。

 それも話しつつ。

 書き手に関しても詳しいのか。

 私としてはマンガを読むとき、完全にストーリーに没頭したいタチだがね。

 作者の話は異物……。



「―――そこでコンビニさんは」


 コンビニさんのことも、彼から伝え聞いた。

 というか頻繁に飛び出す話題だった。

 彼はコンビニで、良くマンガの話をする相手がいるらしい。

 

 懐かしいことだ。

 私も学生の頃は、町の書店の世話になったものだった。


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