第21話 勉強をする高校生
学年末のテストが近いのだった。
そういえば私は学生だったのだ。
私は高校生。
おかしなことばかり言っているけれど高校生で、だからテスト期間の教室の空気を体感することになる。
今回も、勉強中。
「ロシアの周辺諸国の自然環境は」
「あー、えーと、ウラル山脈がー」
ガチャ子たちと集まって勉強する機会が増えた。
今は地理の内容の確認。
私よりもずっとできる子だけど、私の相手もしてくれる。
ちなみにミナキは別グループだ―――同じ部活の子たちと、勉強することは多いらしい。
友達はみんな教科書もしくは単語カードなんかを持ちながらそれぞれテストに向けての確認というか勉強をしていた。
私も私で、絵だけを描いている生徒、というわけにはいかない―――と、この普通科高校に通っている間はそうしようと、思っている。
本当ですよ。
実績が、成績が伴っているかどうかは別として。
ノートに一生懸命、教科書で太字で書いてある重要そうなところを繰り返し書いていた。
私は書く派かな。
書いて覚える派かな?
「なんだい
私はそんなことないよーという。
「いいや、わからんですよ、牡丹は神オーラっぽいものが沸いてる。余裕が感じられる。最近、なんだか楽しそうだし」
ガチャ子が、なぜか胸を張って代わりに答える。
なぜキミが私の―――そのう、状況を答えるのかね。
………ていうか。
「………私が余裕?楽しそう?」
「うん」
ガチャ子が頷く。
あんたの方が学校を、アルバイトをエンジョイしていそうだが。
「成績アップの方法でも見つかったのかと思った。なんかパワーを感じるもん、最近の牡丹」
「………………そうかな?」
私は焦った。
けど、焦った理由もよくわからなかった―――いや、たぶん、私のいろんな部分が、最近変わったんだ。
イラストコンテストに夢中になっていた時期が私の表情筋、もちもちな頬っぺたに少なからず影響を与えていたのだろうか。
にやけていたのだろうか。
もちもち。
私の絵を描くときのペンネーム。
頬っぺたがもちもちしている女の子っていいよね、という理由から付けたネームではない。
いや、可愛いけどさ。
最初は棚からぼた餅、という
棚から
小学生の時にちょっとの期間、クラスの女の子から言われたことがあった言葉遊び。
それがルーツというか、発端というか、名前のヒント。
「テストは本当に自信がないので、教えてくださいガチャ子さま」
私は頭の上で両手を合わす。
必死さはなかった。
今のわたしが高得点を取れるはずはないし、高得点をとっても楽しいと―――思えたことはなかった。
達成感が湧かない。
本当にやりたいことではなかった。
仮に百点をどれかの教科で取れても―――それで、コンテストのあの悔しさ以上に動くとは思えない。
あれは、……震えるものだった。
まだ何か、もっと動かしたいと願うほどの。
何が動く……気持ちとか……?
ただ、変わらなければならない気はする。
中身が。
頭だって。
勉強は苦手だけど、頭は良くなりたい。
そんな気持ちだけは、嘘じゃない。
頭を使って―――そうすれば、わかるかな。
絵をもっと、上手くなる方法が、すぐに思いつく、人間になれるなら………勉強したい、かも。
もっと私の頭が良ければなにか、ビビちゃんのことも違う結果になっていたのだろうか?
そんな事ばかりに、気持ちが向く。
「はっはっは、苦しゅうない、―――
なんだか時代劇っぽくなった。
時代劇―――ああ、古典も心配なのよ。
ていうか時代劇って古典なのかな?
「菓子はありませぬ、お
ダメだこいつら勉強する気ねえや状態に、移行している私たち。
勉強会って結局勉強せずに遊びますよね。
そうじゃあありませんか?
いえいえ、まあ書きますよ。
何々―――ロシアはウラル山脈を境にして、西をヨーロッパロシアと言います。
東はシベリアです。
カスピ海ってカスピ海ヨーグルトのところだよね。
そんなこんなで教室でお勉強しています。
コンビニにも、帰りは寄るけれどね―――。
そんなこんなで、勉強について余裕が感じられるなどという事はございません。
しかし、テスト勉強。
ああそうかコンビニおとこが、最近来ていない理由は、テストが近いからなのかな、とふと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます