第20話 もう一度コンテストがあれば
やってきたコンビニに、あのマンガ批評家男子はいなかった。
それでも私は、既に立ち読みによって表紙がややダメージを負った週刊少年王者を手に取った。
雑誌がボロボロな件は。
コンビニに対して何とはなしに悪い気はしたので、普段から出来る限り、飲み物やお菓子の類とかを買おうとしている。
ウチは親が厳しいのであまりお菓子ばかり食べるなとうるさいのだけれど―――ええ、基本的にすべての物事に対してうるさいです。
私をほめてくれた記憶はないです、小学生のころだったか、褒めてくれた最後は―――。もう何も見えません。
兎にも角にも、わたしはそうやって、マンガ読みとして当たり前の生活に戻りつつあった。
一生懸命描くのは、しばしおやすみ。
いや、シュウくんを描くのは、もう一度やろうかな―――
けれど、ううむ。
「またコンテストがあれば」
それに参加する可能性がある。
そして―――また、参加して―――一生懸命に頑張ると思う。
そして大賞か、グランプリか―――そういったものを獲得するために頑張ると思う。
そして、けれど―――。
「コンテストにはまた出る、けれど今のままじゃあ………」
まだ開催さえ決まっていないイラストコンテストの、結果がわかりきっていた。
私は自分が今持っているものをすべて使った。
自分なりに積み上げてきた絵のスキル、経験値。
上手くいかないところはあったけれど―――手は抜かなかったと思う。
そうして、このコンテストでは、わたしのビビちゃんは選ばれなかった―――。
「今のままじゃあ、ダメのような……」
そんなことを呟きながら、再び手元の週刊少年王者に視線を落とす。
ダメのような。
でもどこがどういう理由でなのかまで、わからず。
お気に入りのギャグマンガは今週も快調だった。
自然と、口元をほころばせる。
私のもやもやとした、歯がゆい気持ちは、ひとまずは治まっていった。
それはそれとして、次。
問題は次の行動だった。
今までの事よりも、これからの事の方が、重要だ―――と、私は前向きに考える。
けれど前向きに考えたところで、次にどうすればいいのかわからなかった。
私は初めてのコンテストで、自分のベストを尽くして、たくさん気を付けて、負けた。
けれど今、負けたことよりももっと大きな問題に差し掛かっている。
直面しているのだった。
「とりあえず描くしかない―――マンガの模写を、もっと………?もっとすればいい?」
間違ってはいないだろうけれど―――これでは今までと同じだと思う。
何かが違う。
ふと、あの男なら、と思った。
私の貧弱な頭脳では答えを導きだせないらしい。
あの男はどういうふうに返事をするだろうか、と考えた。
同じ高校に通っている以上、頭の出来に大きな違いはないだろうけれど―――それでも私以外の意見を聞きたくなった。
………いや、やっぱりこれは違うか。
あの男は絵って感じじゃあない。
何となくだけど。
ていうかマンガの話がしたかった。
しかしこの日は、とうとうコンビニに彼は現れなかった。
翌日も、その次の日―――週明けにも。
コンビニおとこが来ない件について、疑問を覚えながらも、再び元の生活にもどっていく。
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